本

『続・生きかた上手』

ホンとの本

『続・生きかた上手』
日野原重明
ユーリーグ
\1,200
2003.9

 すでに「続」のないこの題の本が、ベストセラーを記録している。2001年末のことだ。なかなか、ベストセラーには手を出さない私の性格から、このすばらしい本を読むこともなかった。今回、図書館の新刊の棚に「続」を見つけ、ふと読んでみようと思い立ったのは、与えられた「時」であったのかもしれない。
 日野原さんは、教会に集う一人の立場から見ると、重要なオピニオンリーダーである。牧師の子として生まれた日野原さんは、クリスチャンとして世に光を輝かせている。予防医学やターミナルケア、習慣病などの言葉を生んだり普及させたりして、健康への意識を高め、また命の質についての概念を改めさせた功績は、いくら称えても称えすぎることはあるまい。それが、聖路加国際病院理事長・名誉院長としての立場であるがゆえというわけでもなく、日野原さんにこそそうした立場が相応しいと言わしめるほどのものとなっている所以である。
 ルカによる福音書を記したとされるルカの名を冠した病院は、もちろんキリスト教の精神に基づいている。ホスピスどころか、ホスピタルの名も、元来キリスト教の修道院が人をもてなしたことに由来するのであり、人のいのちを見守り助けることは、聖書からして当然のこととされている。日野原さんが、健康について記述する言葉が、聖書という大きないのちに支えられてその聖書という空間の中で流れていることは、聖書を知る人から見れば明らかである。決して聖書の言葉を振りかざしはしないが、さりげなくそれを紹介するとなるなど、心憎い効果をもたらす。
 一般書店では発売されない健康雑誌『いきいき』に連載されている一コラムを集めただけの本が、どうしてこれほどに売れたのか。販売法や宣伝がよかったのだということもあるだろうが、なにより、この本が感動的だったからであることは間違いない。90を数える医師が健康を語る。これほど実証的なこともない。だがそれだけでなく、その言葉が人間の真実を射止めていたからであろうと私は想像する。
 この雑誌は、人生後半の年代をターゲットとしているが、たとえそうでなくても、豊かな想像力をもつ人の心には十分響くものであろう。その年代の人ならなおさら、切実にしみじみと味わいうなずくような言葉が多いであろう。聖書を知らない方もそこに魅力を見いだしているし、聖書を知る人も、あらためて聖書の意味が身を切られるように分かるという感想を、読後にもたれるかもしれない。
 人生を変えるくらいの力をもつ本だ。なぜならそこには、神の力が宿されているから。




Takapan
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