本

『いけちゃんとぼく』

ホンとの本

『いけちゃんとぼく』
西原理恵子
角川書店
\1155
2006.8

 癖のある絵とそのあけすけな内容で人気の漫画家による、多分に絵本と呼んでよいような、マンガの本。
 いい加減な手書きのコンテでさしてデッサンに力を注いでいないかのような図柄の本なのだが、だからと言って、ストーリーテラーとしての真骨頂が問われるということが、忘れ去られているわけではない。
 いけちゃんという、謎のキャラクター。おばけのようだ。しかしこのおばけは、人間であるボクにしきりに近づいてくる。
 この「ボク」というのがくせ者である。私はどこか自分を見ているようでもあり、他方、今の社会でよくいるタイプだなと気づく友いる。
 男の子の成長を描いているようにも見える。どこかヒントを送っているかのような、怪しいナレーションによって、伏線もできていく。
 少年の心の心臓を撫でられるかのように、微妙な空気の流れが、読者たちの間に漂うことだろうと思う。そう、「少年」という視点が、私たちのものになるなどして、深い感慨を与えた本である。
 少年は、時の中を自由に駆ける。そんな前提から、この絵編とも読んでよい本の、あり方が決まる。その謎は、作者の思い通りにはゆかないかもしれないが、近いものを運んでくる、そんな感覚の生徒がいることだろう。
 破壊的であるかのようにさえ見える、絵やセリフなのだが、その背後にある何ものかに気づくことが皆無であるわけにはゆかない。さしあたり、そんな風景を楽しんで戴くというのはどうだろう。
 私は少年の心をくすぐられて、心地よい。そして、一生を垣間見るような思いさえ、した。




Takapan
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