本

『アイデア会議』

ホンとの本

『アイデア会議』
加藤昌治
大和書房
\1575
2006.11

 アイデアというものは、形にあらわされない。しかし、あらゆる創造のきっかけとなるものと言われている。創造は、偶然にはできない。
 なにも、ここにプラトンの「イデア」を持ち出そうとは思わないが、アイデアということでどういうことを期待してよいのかなど、ひとつの参考にはなる原点だとは言えるだろう。
 これぞ、というアイデアを披露してみたところで、食いつきが悪ければボツになる。情熱を傾けてプレゼンした企画が通らない。なんとも情けないやら、腹立たしいやら。
 いざ会議、となった場で急に案はありませんか、などと言い寄られることさえある世の中で、いくつかのアイデアを元に、侃々諤々の意見が集まっていくというのは、なんとも頼もしい。そのためには、発言者と発言内容とは峻別する必要がある。この本は、そうしたところから明確に定めていく。
 具体的に、このような紙にこのような仕方で、というふうに、本書は導いていく。よくあるビジネスのノウハウ本のようではあるけれども、ちょっとしたツボがはっきり示されていて、それを守ることによって、アイデアが豊かにあふれていくというのである。ちょっと俄には信じがたいことではあるが、要するに、どんなアイデアがよいか、ということを知らせる本ではなくて、どうすれば、誰もが思いつき得るようなアイデアをすんなり出すことが可能か、それを採用する判断が可能か、という発想で、本書は展開されているのである。
 よいアイデアが発表されたのを聞いて、私たちは「しまった。やられた」と思うことが多い。「そんなこと、思いもよらなかった」のではなくて、「俺も考えたことあるぞ」が多いというのである。だからこそ、少しでも思い浮かんで面白そうなものは全部吐き出してしまったほうがいい。それも、自分ひとりではなく、グループの前で。一人では確信がもてなかったことも、多人数だと、別の視点からそれが可能になっていくことがある。また、付随したアイデアがどんどん広がることもある。
 私は真剣に考えたが、教会の役員会でも何でも、こうしたアイデア会議がぜひとも必要なのではないだろうか。何でも「祈りましょう」だけで事が進んでいくとは思えない。アイデアを出し合うということを、以前教会で試みたことがあったが、それ一回きりで終わったのは、まことにもったいない。日頃から、アイデアを出しあう機会をもちたい。アイデアを出せる雰囲気を作りたい。
 その意味でも、この本から学ぶことは多かった。




Takapan
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