本

『評論入門のための高校入試国語』

ホンとの本

『評論入門のための高校入試国語』
石原千秋
NHKブックス1025
\1123
2005.3

 先日、同じ著者の、大学受験国語の本を読んだばかりだ。面白かったので、さらに、というわけだが、実はこれの姉妹編は以前に買って読んでいる。今回も買ってみた。自分の仕事の参考になるというのも、もちろんだ。以前に読んだゆえなのか、国語指導については自信のない私への、この著者の影響は小さくない。
 高校受験となると、難解な概念で抽象的な議論を展開するものは選ばれることがない。かなり具体的な話題となることだろう。が、中心概念が具体的であるとは限らない。そもそも評論というもの自体が、何らかの抽象的な議論の部分を有してしかるべきものだとも言えよう。
 この本は、「自己」「言葉」「時間」「自然」「科学」「比較文化」「社会」「情報」の八つの分野に設定して、入試問題のカテゴリーを選んでいる。
 これらの中にしかも、「近代批判」の精神を最上位として掲げることによって、ほぼ入試の評論は制服できる地盤ができたのだ、ということになる。設問の殆どは、このテーマの理解と、主題文の決定によって、正解できる、というのである。
 設問のひとつひとつの解き方が、これほど詳しく書かれている参考書も、ない。いったいどこをどう読めば、正解が得られるのか、国語に覇気のある生徒は、挑んでみるとよいだろう。ただし、これらの思想についてのそれなりの理解を以て臨まなければならないから、厳しい。なんとなく答えて正解だったなどというレベルではなく、本文を読み込み理解した上での堂々の解法というわけである。
 相変わらず言うのだが、これはまた、大人もまた読んでみたい本である。いい大人が、世の中のことについて、何も理解していないということが、よく分かるであろう。会社の利益を目指すことだけが人生だと信じて疑わない人には、とくにお勧めする。この本を味わって、私たちは、如何に加害者であるか、ということも、痛切に感じることがなければ、思考力と健全な感性をもつ人間ではない。




Takapan
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