本

『放送のしくみ』

ホンとの本

『放送のしくみ』
新星出版社
\1575
2008.10

 こういうのは旬な頃というのがあるし、また技術が進めば、改訂されていかなければならない運命をもつ。しかし、ここのところの放送技術の変化は、たしかに注目に値する。それでいて、デジタルとアナログとはどう違うか、ということなど、分かっているようで、説明しようとするとまともに説明できないことがあまりにも多いことに気づく。
 本書は「カラー版・徹底図解」ということで、図が多用してあり分かりやすい。見開き2頁でまとめられているのであるが、分類や記述も理解しやすく工夫されており、非常によい説明であるように感じた。
 そもそも民放はどういうビジネスで成り立っているのか、ラジオ番組はどのように制作され、発信されているのか。そもそもマイクはどういう仕組みなのか。視聴率の仕組み、データ放送、そしてその録画方法など、実に興味深い。
 最後に、放送の歴史を辿るというのも、粋な方法ではあるまいか。最先端の技術を紹介して終わり、というのでなく、高柳健次郎に始まり、過去を丁寧に辿るのである。そうして、未来の展望へとつなげていく。
 素人が読むのに適切な程度にまとめてあると思われるが、それにしても、そう簡単にすべてを理解できるとは思われない。だが、アナログ放送からデジタル放送に切り替わろうとしている時代にあって、新たな機器を購入しないといけない各家庭である。製品のカタログには、まるでこれらの原理や用語をすべて知り尽くした人だけが分かるような書き方で、機能が紹介してあるのだ。全部分かってから購入するという必要もないだろうが、いざ買って使い始めて、こんなはずではなかった、と思うようなことが、きっとあちこちで起こっているに違いない。
 私たちの勉強には限りがある。できるだけ簡単に、せめてカタログに載せられている「差異」のようなものが判別できるような知識が提供されてほしいものだと思われる。これは、なにもデジタル機器に限らない。私たちの生活は、そういう、ともすれば専門家に操られる時代の中に置かれているのである。その専門家というのが、政治家であったり、軍事家であったりするようになったのが、かつての時代であった。
 勉強しないと、頭のいい奴の自由に操られるぞ、と、勉強しない生徒たちにハッパを掛けるドラマがあった。私は基本的に、この警告を重要だと考える。テストで点を取るのが目的ではなくても、学ぼう、考えよう、という姿勢をもつことは、大切な営みであると思うのだ。




Takapan
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