本

『手で作る本』

ホンとの本

『手で作る本』
山崎曜
文化出版局
\1575
2006.3

 なんとも優雅な趣味である。手作りの本。世界にただ一つの自分だけの本を、丁寧にこしらえる。そのための、有りと凡ゆるアドバイスが、この一冊にこめられている。たしかに、製本についての断片的な紹介は、雑誌などにも見られるだろう。また、専門的な工業製本についても、説明した書物はあることだろう。だが、これはまたひと味違う。
 ハンドメイドという言葉さえ否むような、和心に満ちた、本づくり。それは、本を作るというよりも、まるで、本をつくっているという行為で満たされた、「時間」を作っているかのようである。
 味わい深い本作りの詳しい説明が続いた最後に、道具の使い方の頁がある。ここが、またいい。紙を切るということの基本や、カッターナイフの持ち方などが、イラストと共に、実に分かりやすく紹介されている。こうなると、もはや本作りという目的だけに限定される必要もない。私たちは、このように理に敵った文具の使い方を、しているだろうか。そんなことまでが、問われそうである。
 本を作るという行為を通じて、「時間」がつくられ、そうして「心」がつくられていく。そのためには、使う道具ひとつひとつ、素材ひとつひとつへの、愛情が求められるのである。




Takapan
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