本

『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』

ホンとの本

『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』
本田美和子
朝日出版社
\1029
2006.6

 マスコミで危機的にエイズが語られた時期もあった。それが、今はそうではなくなった。お笑いテレビや今何してる式のケータイに明け暮れる人種は、このことだけで、エイズが減少していると思いこんでいる。
 自分だけは大丈夫、ということが、普通に信じられているのは、何もエイズに限ったことではない。
 実情はどうなのだろうか。となると、実に危機的であることが判明する。
 AC(公共広告機構)の鮮烈なCM「カレシの元カノの元カレって知ってる?」がなかったら、ますます破滅的になっていったことだろう。いや、あれを見ても聞いても、まだ、自分は大丈夫と思いこみ、安心したい者がどれほどいることか。
 国立国際医療センターのエイズ研究部門に勤務する著者は、女性である。同じ女性たちに対して話をしていく、という設定の本である。その女性たちとは、二十代とされ、最後にはある特定の患者へのインタビューを深めていく形式になっている。
 そのため、たいへん読みやすい。人の話をただ聞くような感じででも、受けとめていくことができる。たぶん、それが狙いなのだろうと思う。へたに理論的に危機をアピールしても、聞いてもらえなければ意味がない。どうやったら、思いこんでいてそれが普通だと強がっているような若者たちに、危機感を抱いてもらえるだろうか。その痛いほどの願いが、伝わってくる。
 具体的な治療や金額、それを言い出せないことの苦しみなども、十分に取り扱っている。そして自分がそのようになる可能性がどんなに大きいか、ということも、数字ではない説得の仕方で迫ってくる。
 およそ、伝える側としては、最善の方法をとっているように見える。




Takapan
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