本

『葉っぱ博物館』

ホンとの本

『葉っぱ博物館』
写真・亀田龍吉
文・多田多恵子
山と渓谷社
\1,600
2003.9

 木の葉を見ただけで、これは何の木だ、こんな木だ、と説明する人がいる。羨ましいと思う。自然とそんな形で友だちでいることができるのは、すばらしい。私たちは植物の名前も知らないし、名前だけは聞いたことがあっても、実際にそこにある木の名前を指摘することはできない。自然を大切にしよう、などと号令をかけても、木の名前ひとつ知らずして自然を愛する顔をすることができようか。
 この図鑑は、葉にこだわったもの。しかも緑の葉。紅葉については、姉妹編『紅葉と落ち葉』というのがある。また、実についても『ドングリと松ぼっくり』と題して同様の図鑑がある。私が今回手にしたのは、緑の葉のバージョン。  まず、葉の形状や付き方の種類分けに始まり、葉っぱの付き方を詳しく解説する。すべてが美しい写真によるもので、見ているだけでうっとりする。
 一つ一つの葉について、その植物の解説がかなり詳しくなされていて、楽しい。たとえばシロツメクサには、「マメ科シャジクソウ属/互生 別名クローバー。欧州原産の多年草で、葉は3出複葉。牧草として栽培され、葉柄や花茎はしなやかで踏まれ強い。茎が地面をはって一面に広がるが、よく見ると株によって葉の形や斑紋に個性があり、どこまでが同一株か判別できる。ときに小葉の数が多いものがあり、四つ葉を見つけると幸せが訪れる!?」と書いてある。その横のアカツメクサには「四つ葉はまず見ない」とあり、そうだったんだ、と驚かさせた。
 葉っぱについてのあらゆる情報がここにある。最後には、食べられる葉っぱとしての野菜についてのページがあり、柏などの食品を包む葉、家紋に選ばれている葉など、私たちの生活に広く関わっている姿が紹介されている。私たちは森の中に誘われる。豊かな命が育まれている森の息吹が、そこから感じられなければ嘘である。
 そういえば、木の芽ばかりの写真を集めたサイトがあった。本もあった。人の顔のような表情が可愛く、面白かった。私たちは、物言わぬこうした命の営みに対して、もっと耳を傾けてみなければならない。自然の声が聞こえてくる。命の意味が心の奥底からにじみ出してくる。もっと、何を大切にしなければならないのか、語りかけるものがある。
 これほど緑ばかりに包まれた本も珍しい。人はそこに癒される思いをもつだろう。




Takapan
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