本

『葉っぱの不思議な力』

ホンとの本

『葉っぱの不思議な力』
鷲谷いづみ・文
埴沙萌・写真
山と渓谷社
\1680
2005.6

 ふんだんに写真があり、その緑を見ているだけでも、目から体の内部がどんどん癒されるような気がする。近くから、遠くから、草木を愛している写真家の眼差しがぐいぐいと伝わってくる。写真だけでも、十分「不思議な力」が示されている。
 葉っぱの形は、どうしてあんなふうなのか。あるいは、いろいろなものがあるのか。葉のつきかたに特徴があるか。葉の厚みには意味があるのか。葉の表面の毛はどんな働きをしているのか。食物連鎖の観点から葉は動物に食べられるというのを当然としているものなのか。
 疑問はつきないが、それぞれに、きちんとした答えを用意しているのが、この本である。それも、中学程度の理科の知識があれば、容易にほぼ読めるような仕方で、説明してあるとすれば、魅力はさらに増す。
 そもそも葉っぱとは、光合成をするためにある。あるいは、呼吸や蒸散の作用としても機能する。植物が生きるために、葉という店舗を出して営業利益を上げようとすれば、どんな経営をすればよいのか。時には、そんなふうな観点からの解説もある。これが実に分かりやすくて、愉快である。
 この光合成などの基本姿勢から、葉っぱの不思議な性質が解き明かされていくのが、楽しい。
 葉は、光合成をするがゆえに、光が当たればそれだけ喜ぶような気がしていた。大間違いだった。強すぎる光を浴びると、葉の中がエネルギー過剰になり、代謝を見出し、あるいは高温になって乾燥しがちになり、水不足に陥る。これは葉にとってストレスである。葉は、暑い陽射しのもとでは、活動をやめ、昼寝をするというのだ。炎天下では数時間も!
 葉っぱだって、そう易々と虫や動物たちに食べられて楽しいはずがない。様々に、食べられないための工夫や仕組みが備えられているという説明も、呼んでいて楽しかった。妙に「人間らしい」感情が、そこにあるかのように見えたからである。
 愛・地球博もいいが、この小さな本からでも、私たちは植物への畏敬の念さえ覚えることができるのだから、これは心の癒しのためにも、環境保護思想としても、ぜひ出会っておきたい本である。




Takapan
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