本

『高いわけ、安いわけ』

ホンとの本

『高いわけ、安いわけ』
NACS東日本支部食部会
大月書店
\1575
2008.10

 地味な本であるかもしれない。「食品表示で読み解く価格差」と表紙にある。カラーになっているのは、この表紙のみ。大きさと厚みを考えると、ちょっと高価かな、というふうに思える。
 だが、面白いのは面白い。調査は2007年末から2008年春にかけてであるという。データは少しばかり古い。しかし、ここでは価格の差を見ているのだから、今のところ大幅に違うという印象はない。
 何がしてある本であるかというと、見開き2頁で、ひとつの食品を取り上げ、その中の安い部類のものと、高い部類のものとを紹介するというものである。その「食品表示」の部分を写真で示し、その中のとくにどこに注目する必要があるのか、などを教えてくれる。
 この単純な形式が、一旦この世界に入っていくと、たまらなく面白く感じられてくるから不思議だ。なにしろ生活の中で毎日触れているものである。あれはああだったんだ、これはこうなのか、と、わくわくした気持ちで見入ってしまうのである。
 生鮮食料品、調味料、飲料、加工品と部門を分けて取り上げていくが、どの項目も楽しませてくれる。安物と高級品とでは、どこが違うか、どこに目をつけて選び分けていくとよいのか、そういう生活目線に徹底的にこだわって、この本が築かれている点は見事だと言えよう。
 価格差の秘密となると、ここにあるように、原材料の違いや、その製法の違いが基本的にその理由ということになるだろう。値段の高いのと安いのとでは、どこが違うのか、を知る機会となる。その比較が、理由を載せつつどんどん続いていく。右の頁には専ら説明がなされたているが、そこから、私たちは多くのことを学ぶことができる。
 中国産だから安い、という説明や証拠は、やはりたくさんある。しかし、この本はすべての食材について、好意的に解しているように見える。また、高いのがその人にとり一番優れている、とは限らない。好みに合わせたり、また事情がいろいろあるのだが、安いのを買っていかないと家が成り立たない、と考えている人も少なくない。何のせいで安いのか、その「からくり」を知っていたいと思うはずだ。
 単純な構成であり、その点狂いはないと思う。しかし、今日もバーゲン品を籠に入れていく人がいる。それでいいと思う。どうして高いのか、どうして安いのか、そのことを頭に浮かべるようにすると、だんだん、買い物が自分だけのためにやっているのではない、という気持ちにもなってくるような気がした。




Takapan
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