本

『話が面白い人の習慣術』

ホンとの本

『話が面白い人の習慣術』
高嶋秀武
青春出版社
\1365
2004.8

 ニッポン放送のアナウンサーが著したノウハウ術。そう聞くと、いかにもハウツーものだな、という印象を与えてしまうだろう。しかし私は、もしかすると著者の意に反するかもしれないが、話し方のノウハウの本だとはちっとも思わずに、楽しく読ませてもらった。
 サブタイトルは「成功をもたらす実践コミュニケーション」とある。なるほど、それはそうだろうと思う。だが、著者は、人気を博したアナウンサーであり、講演会などでも活躍しているとはいえ、「話で楽しませる」のが職業であるにしても、「教える」のが職業ではない。この本は、効果的に「教え」てくれはしないし、私たちも容易に「学ぶ」ことはできない。そう考えておいたほうが、無難である。
 私も、曲がりなりにも人前で話すのが仕事である。元々、そんなことは自分にはできないと考えていた。小学校のときに代表として何かを読むくらいは何とも思わなかったが、さすがに二十歳あたりになると、たまらなく意識し、人前では喋れなくなるようなこともあった。それが、場数を踏めばなんとでも喋ることができるようになる、という実例を自ら演ずることとなった。
 なんのことはない。この著者もまた、場数があればと書いている。
 そして、こういうときにはこのようにせよ、という法則めいたものを小さな項目として、沢山書き並べているのであるが、断片的であって、教育的でもない。
 こんなふうに書くと、この本は大したことないな、というふうに思われたかもしれない。
 いや、この本を読めば話が上手になることを期待するには甘すぎるであろうが、この本の文章そのものは、抜群に面白いのである。ラジオのパーソナリティとして活躍した経験がその裏にある。面白い話のネタには困らないのだ。そこで、面白い話はこのようなものだというふうに、憚ることなく次々と示される例が、実にいい。たまらなく楽しい。
 さんま・ビートたけしなどトークに定評のある人の実例が紹介されており、私は、それらを読むだけでこの本を楽しく読み進んだと言ってもいいくらいだ。
 それでいいと思う。面白い話だな、楽しい、そういう気持ちで沢山のトーク例に触れていくことで、だんだんと自分の中で言いたいことが膨らんでくる。話をするというのは、一定の法則に従って言葉を繰り出していくことではなくて、語る自分という存在が、ゆとりをもち、寛い心で、見える世界を楽しんでいることでなければならないのである。
 私の気分が、楽しい語らいに包まれたとき、私もまた、人を楽しくさせる言葉を吐き出していくことができる、というものなのであろう。




Takapan
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