本

『斎藤孝の 実践 母親塾』

ホンとの本

『斎藤孝の 実践 母親塾』
斎藤孝
旺文社
\1260
2005.3

 飛ぶ鳥を落とす勢いの、教育学の教授。3色ボールペンや声を出す日本語、そしてNHK教育番組のプロデュースなどの多彩な実践活動は、この名前を冠すれば本が売れるというほどの、目立ちようである。
 いや、この本には恐れ入った。
 どこの進学塾の先生が書いたのかと思われるほど、激しい教育熱が窺える。事実、塾が主張することと多く重なっている。
 それは、たんに商売目的というばかりでない。トップ校などに合格する子どもたちの思考力が近年どのように変化してきているのか、塾側はよく分かっているからである。明らかに、能力的に劣ってきているのだ。
 私も体験的に実感できているゆえに、それは何故かを考えたり、そこからどうすればよいかを模索したりしている。この「たかぱんワイド」にもそうした迷いや錯誤がその都度記され、刻まれている。
 斎藤先生のこの本は、精神論など微塵もない。実に教育的配慮に包まれた、題名に恥じぬ「実践」の本である。
 私たち塾でも、子どもたちに、「問題をよく読みなさい」と言う。だが、子どもたちは読んでいる。読んでいて、読めていないのだ。だから、こんな注意は、意味がない。子どもたちは、どうすればよく読めるようになるのか、が知りたいのに、「よく読め」では何も進展しないのである。そこで私は、この点を具体的に告げる。「(メモや図、傍線などを)書きながら読むこと、それが『よく読む』ことです」と。
 言ってみれば、この本は、全編がそうしたアドバイスとなっている。
 受験のためだけにそれを言っているのではない。「生きる力」「考える力」のある子どもにするために必要なエッセンスが、そのような具体的な方法に基づくのだ。
 内容は厳しい書き方がずいぶんしてあるように受け止められると思うが、これは大変役に立つ本である。いや、ここにある改革を行わないと、本当に日本は滅んでしまう、とさえ共感するところである。




Takapan
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