本

『母は娘の人生を支配する』

ホンとの本

『母は娘の人生を支配する』
斎藤環
NHKBooks1111
\966
2008.5

 なぜ「母殺し」は難しいのか――そういうサブタイトルが目を惹く。タイトルとこのサブタイトルが、本の内容を要約している。その意味では、分かりやすい題である。
 性と親子の関係では、4種類の組み合わせがあるが、そのうち母と娘という同性の組み合わせに、特別のものがあるという論旨である。もちろん、他の関係においても、それぞれの事情や心理があるものだろう。はたして娘が母親を殺すという事件が少数であるからなのかどうか、それはたんに娘が親を殺めるという事件そのものが少ないことと関係があるのか、そうした犯罪立証の問題として、このことを取り上げているのではないらしい。
 臨床的に調査しているのもあるが、考察も多い。とくに、特徴的なのが、少女マンガにどう描かれているか、という点である。この本の特筆すべきは、まさにそこにあるのではないかと思う。
 思想的な領域にも生きる男性に比べて、女性はこのからだにどっぷりと生きているようであるという。そのからだ同士でつながる母と娘には、独特の関係が成り立つというのであるから、ある意味で自然な考察である。
 はたしてそれほどに単純化していよいのかという疑問が生じる一方、それでも性に潜む何かを取り上げる必要があるのではないかという研究心も大切であり、そういう意味で、ジェンダー問題に対する筆者の態度というものもはっきり宣言しているなど、筆者も心得ているところがある。
 私もまた、男性の一人である。こうした女性の立場に関わる問題を透過する眼差しを有しているとは言い難い。筆者も男性として、そうした点への問いかけを忘れてはいない。だがそれ以上に、私はまた、この研究に関しては、判断をどのように下してよいのかどうか、分からないのである。読者がどうのように評するのか、とくに女性がどう読みとるのであるのか、そこに興味がある。だからむしろ、私がどう読んだかというよりも、そしてこの本がどう書かれているかというよりも、女性読者がどう受けとめたかという点に関心がある。
 それにしても、マンガを素材として考察するのは、面白いと思う一方、これだけメディアが散らかるほどに増殖している時代にあって、マンガをどこまで資料として活用できるのか、またそれを文献として紹介できるのか、など困難な問題点をも感じてしまうものである。




Takapan
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