本

『目で見る数学』

ホンとの本

『目で見る数学』
ジョニー・ボール
山崎直美訳
さ・え・ら書房
\2940
2006.10

 算数や数学は、思考訓練でもあるから、ある程度「発想」というものが必要になる。それを「センス」と呼ぶこともできるだろう。
 発想やセンスをそのような意味で捉えるとすると、これはたんなる才能、とくに生まれつきの才能だということはできなくなる。慣れれば、そのように考えることは容易になるからだ。これを喩えて言えば、土の上に水を流すようなものである。最初はどこに流れてよいか分からないが、少しでもまわりより低い水路ができれば、水はそこへ集まるようになる。するとさらに深く水路が掘られるようになり、水がくればいつもその水路を流れるようになっていく。
 センスは磨くことができる。この本は、それを助けるものとなる。
 たとえば中学受験の算数においては、たんにパターンを暗記するというだけではうまくゆかないことが多い。出題者が知っていること、試してみたいと思いがちなことといえば、やはりふだんやっている数学の授業の内容に関わることであったり、知っている数学的知恵につながるものであったりするものである。
 この本は、そうした数学的な知恵に満ちている。古来人類の頭脳を悩まし続けた事柄や、そこから生じた魅力的なパズルなどが、ふんだんに紹介してある。時にいたずらっぽいなぞなぞめいたものもあり、退屈しない。  そこに書いてある内容については、少なくとも私が見るかぎり、申し分のないほどに、センスを磨くのに豊かなパワーを与えてくれるものばかりである。
 なぜなら、私が授業で用いるエピソードの多くが、ここにちゃんと紹介されているからだ。私が知らなかったことも含めて、この本にはたくさんの知恵が示されている。
 中学や高校を受験する人たちが、こうした本で感覚を磨いていけば、大きな力を得るだろう。目に見える、出題パターンとか出題傾向だとかいうのに目を奪われず、そもそも問題を解くために弁えていたい基礎体力あるいは動体視力のようなものが、きっと養えることであろう。
 サブタイトルにあるように、まさに「美しい数・形の世界」と出会えることだろう。




Takapan
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