本

『グーグルが日本を破壊する』

ホンとの本

『グーグルが日本を破壊する』
竹内一正
PHP新書518
\756
2008.4

 本のタイトルは、えてして客引きの広告である。中身と同じだという保証はない。それが昨今の売り方だ。私は基本的にそれは偽装と変わらないと考える。
 グーグルについてのかなりの情報や実情を伝えてくれるという点では優れた本なのであるが、はたしてタイトルのような内容を言っていたかというと、どうも思い当たらない。むしろ最後には、日本が勝利するにはどうすればよいか、という前向きな提案がなされている。せいぜい、日本型と分類したマイクロソフト社が没落するのではないかという分析があった点が、タイトルに近いだろうか。だが、日本の危機を訴えているという場面は、ついぞなかったように思われる。
 要点は、広告料として稼ぐGoogleの方式が、従来のマイクロソフト社に比べると正統的な商売である面が強く、これからのインターネット時代を支えるには、こうした新たな方式を構えることが必需なのではないか、と言っている。
 全体的に、ネット時代の原理的な分析であるなどということはなく、ただかつてはどうであったか、Googleの方法は何か、とくにマイクロソフト社の今後の行方といった一種の占いのように見えることが、繰り返し述べられているように見えた。
 とくに広告方式について、業界の実際の姿が描かれているのは、なるほどという気持ちで読んだ。事情通の読者には受けるかもしれないが、新書にするとすれば、こうしたくすぐる記事が好感度を増すだろう。大企業の悪口や欠点などを堂々と書くことにより、一部の読者のカタルシスを需要させようと考えているかのように見える。
 PHP新書であるから、松下に関係がある著者でもある。その松下の企業戦略にも触れてあるところがあったが、世間で言われているような「マネシタ」という言葉は記されることがなかった。ソニーなどと比べて、企業体質がどうであるかということには、触れられていたのだけれども。
 もう少し原理的な触れ方があれば、この一時だけの本で終わらず、IT業界を今後も考えるときの基盤となりえたかもしれない。しかしこうした時事ものが多くなっていくことにつれ、新書は皮肉なことにあっという間に古びてしまうということを、若者が承知するのであれば、読解にさほど難点はないものと思われる。
 なお、個人的に私はGoogleの検索を使う。また、そのIDで時折するとよいことを見出す。一般客からすると、シンプル過ぎるのではという懸念がある。さあ、今必要なものは、何なのだろうか。




Takapan
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