本

『神さまとお話しした12通の手紙』

ホンとの本

『神さまとお話しした12通の手紙』
エリック=エマニュエル・シュミット
阪田由美子訳
PHP研究所
\1,100
2004.1

 白血病のために余命幾ばくかという、10歳の少年オスカル。本人もそれを予感している。入院中の子どもたちのためにボランティアで世話をするマミーローズという年老いた女性がいる。彼女は、元プロレスラーだとオスカルに語ることで、その心を開かせ、12月のその日から12日間、毎日神さまに手紙を書くように勧める。オスカルは、神さまに、よく分からないままに、手紙を書き始めた。一日で君は10歳ずつ年をとることになるという暗示を受けて。
 オスカルは、医師が両親に、子どもの命があと僅かであることを宣言するのを聞いてしまった。日曜日にしか会いに来ない両親に対して、反抗していたオスカルだったが、その話をまた自分に隠そうとする両親に、よけいに心を閉ざし、その分、マミーローズにだけは心を開き続ける。
 オスカルは病院内で恋愛をする。マミーローズはそれを応援している。毎日の手紙に、その経過が細かく記され、神さまに報告されていく。
 一日に10歳ずつ年をとるオスカルは、やがて老年に達する。不思議なことに、その老年なりの心情をこの実は10歳の少年が、ちゃんと会得していくのだ。
 百歳になったオスカルは、次のように神さまに宛てる。
「ぼくは両親に、人生はおかしな贈り物だということを説明しようとしました。最初、人はこの贈り物を過大評価して、永遠の命を手にしたと思い込む。その後、こんどは低く評価して、人生はバラ色じゃない、短か(ママ)すぎると考え、投げだそうとまでする。最後には、人生は贈り物じゃなくて借り物だということに気づく。すると人生に恥じない生き方をしようとする」
 これはフィクションである。作者はフランスの劇作家。元哲学教授だという。インドの、あるいはイスラムの宗教的視点から捉えた人生のための作品を著した後、このキリスト教的作品で宗教三部作をまとめたといわれている。あまりにも切ないこの物語は、私たちが――まるで子どもの精神しかもたないような大人たちとしての私たちが――、成長していくべき精神の段階を辿っているように思わせる。いくつもの真実をその手紙の中にちりばめながら、私たちを心の奥の世界に連れて行く。もはや、手紙を書いているのはオスカルではなく、読者自身であるかのように変移していくのだ。
 キリスト教的であると言いながら、まったく教義的ではない。漠然と「神さま」というものを思い浮かべる心があれば、何の違和感もなく読むことができる。
 フランスで一年間にわたりベストセラーであったという理由が分かるような気がする。そして、こういう本がベストセラーである文化の健全さを、称えたいと思う。




Takapan
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