本

『現代思想・現代思想の総展望2020』

ホンとの本

『現代思想・現代思想の総展望2020』
青土社
\1400+
2020.1.

 毎年最初の号は、「現代思想の総展望」と題し、最新の流行、と言えば語弊があるかもしれないが、注目されている思想をいろいろ集めたものとなっている。もちろん特別な編集が好きで在ればその方がよいとも言えようが、いまどういう考え方が提唱されているのだろうか、というような漠然とした現代性を尋ねたいならば、この特集はなかなか便利である。
 従って、ここにテーマ性を以てこの雑誌を紹介することは不可能である。巻頭は、「レンマ学」を紹介する。中沢新一氏のインタビューである。雑誌『群像』に連載していたものが「レンマ学」として著作となったが、これを巡り著者が語るところから始まった。山内得立がそのルーツだとは意識していなかった。
 スピノザの創世記解釈の話や、ホラー言語、ホワイトヘッドとハーマンの形而上学や音楽の情動性と続いていくが、盛りだくさんである。ここまでが「芸術・情動・文化」という分野。またひとつ興味深いインタビューが挟まり、「言語・身体・意識」の分野から三つ。「形而上学のその先へ」から二つ、というふうに並ぶと、「討論」という形でなされる人新世なる時代意識の意見のぶつかり合い。それは気候変動などの問題に流れこみ、「自然・存在・物質」と看板が立てられ、アニミズムがまさにアニメの問題につながっていくような不思議なリンクを感じさせた。
 ここまでが特集である。しかし、通常連載の次のシェリングも、実はまさに現代思想の展望にぴったりの内容であるような気もした。それは現代で「実在論」が新たに問われ、また提言されているからだ。これは連載原稿なので結論が出るわけではないが、むしろ今回から始まったが故に、問題提起として読みやすいものであろう。今後どうなるかの楽しみもあるが、さすがに私も毎月購入するわけにはゆかないので、外から見守ろう。その他原稿が少しずつあって、250頁近くの雑誌が幕を閉じる。文字が小さく二段に組んであるため、一頁あたりの文字数は多くなっていると言える。つまり、頁数以上に読み応えがあるということだ。毎晩ちびちびと読み続けて、ようやく読み終わったというところだ。それくらいしないとなかなか読み進められないのだ。ただ、そうやって一度読んでマーカーを引きまくり、注目的にフィルム附箋をシャラシャラ貼っていると、やや概観気味の眼差しで振り返り、今度は束にして掴むことができるかもしれないと期待する。私はそのような読み方をする。とにかく辿るには長時間が使えないので、注目すべきであろうところにマークをしておき、後で全体を知るようにするのだ。
 今回の雑誌は、それでもあまりにもばらばらの思想なので、どこかで一つのものを眺め回す作業が必要であろうと思われる。その時間がまたあるかどうかは未定だが、楽しみにしておこうと思う。
 これらを無理に理解しようとは思わない。だがやはり現代の問題をいろいろいつも考えていると、こうした鋭い考えのまとまりに、何かしらつながってくることがある。また、もやもやとしていた自分の中の考えが、光に照らされてまとまって見えるようにもなる。刺激を受けるということがよいのだ。そして、私としては、聖書を受け取るときのひとつの枠として役立つことがあるかもしれない、と思うのが、本当の楽しみなのである。




Takapan
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