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『一冊で読む 日本の現代詩200』

ホンとの本

『一冊で読む 日本の現代詩200』
西原大輔編著
笠間書院
\2100+
2024.10.

 何気ない本のように見えるかもしれない。有名な詩を集めただけで、安易な本のように思う人がいないとも限らない。
 まずは意義について、「はしがき」からお借りしよう。「未来に残すべき作品を選び、これを一冊にまとめる仕事は、新たな「古典」を生み出してゆく能動的な行為でもあります」と告げ、「読者は、新しい古典を生み出す参加者でもあります」という点を強調する。この「新しい古典」というコンセプトに、編著者は力を入れて語っているように伝わってくる。
 ここには、昭和戦後期から平成初期までの作品が基本的に集められている。原民喜に始まり、坂村真民、まど・みちおや田敏子や峠三吉などの名前を経ると、安西均や黒田三郎といった詩人も置かれる。石垣りんの作品は多く集められていて当然かもしれないが、このような数の多少は、編著者に一任されているのだろう。田村隆一や吉野弘といった、私の世代からすれば懐かしい人もうれしい。個人的には、阪田寛夫が1編しか入れられていないのが惜しい。
 一つひとつの詩に、3行の「メモ」が、必要最小限の解説として付けられており、「出典」が丁寧に載せられている。この「出典」の詳しさには、深い意味がある。それは、「あとがき」に、本書の成立事情が、そしてその事情だけが書かれてあることに関係する。
 本書のようなものは、出版が実に難しいのだ、という。何故か。著作権の問題である。小説を紹介するのとは違い、詩は、一つひとつの作品が短い。その一つひとつに、著作権がかかるのである。また、一人ひとりから、掲載の許可を得なければならないという。これで200の詩を集めるというのは、気の遠くなるような作業ではなかろうか。一冊のアンソロジーをつくるのは、至難の業なのである。
 茨木のり子、大岡信、谷川俊太郎、高良留美子、工藤直子、こうした名前を、いくら挙げてもきりがない。最後を伊藤比呂美が占めるのは、ちょっとうれしい気がする。
 それにしても、この著作権について、編著者は実にナーバスである。「凡例」においても、旧字体や旧仮名遣いについての注釈は当然としても、「出典」について気を使い、一つの詩について、「詩人本人の希望により第三行目を加筆した」というような細かな説明も施されている。さらに、「作品本文は、出典情報は、全て原典及び初出文献・再録文献にあたり、情報の正確さを期した。原典にあたることができなかった文献には「現物未確認」と明記した」とまで書かれている。この仕事の丁寧さ、誠実さというものが、本書の命なのであろう。
 表紙の女性のイラストが、とても引き込もうとする力を有しているようで、いい。中身の詩と、誠実な対処はもちろんのこと、装丁の魅力というものも、本の大切な要素であるのかもしれない。
 なお、本書で特筆すべきであるのは、索引の充実である。「作者名索引」と「題名索引」は、当たり前かもしれないが、ここまで徹底しているのはうれしい。そして「テーマ索引」というのが、ユニークである。植物の詩(リンゴ)・気象天文の詩(夕方)・海の詩(特定の海)・性欲と女の体の詩・喪失感の詩・戦争の詩(南方戦線)・キリスト教と教会の詩・志を述べる詩・平仮名の詩・色彩の詩――これはほんの一例である。実に細々とした分類がなされており、200の詩を縦横に鑑賞できる仕組みが整っている。もしかすると、本書の最高のウリは、ここにあるかもしれない。そしてここにも、編著者の誠実さが如実に現れているのかもしれないと思う。




Takapan
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