本

『「現代」という環境』

ホンとの本

『「現代」という環境』
渡辺雅男+渡辺治共編
旬報社
\1575
/2007.5

 一年間にわたる、市民講座の講義録である。
 大学の社会学部であるから、社会について考えるということだったのだが、それを「環境」という言葉でまとめたところが面白い。私たちを取り巻く世界は、たしかに、森や海というよりは、社会問題のほうが圧倒的に重要だと迫ってくることが多い。
 サブタイトルにあるように「10のキーワードから」現代を、そして現代に置かれた自分自身と、これから自分たちが向かう世の中についての眼差しを得るようにしてある。
 列挙すると、そのキーワードとは、講座10回に振り分けられるのだが、下流社会・エコロジー・ワールドカップ・まちづくり・少子化・ミームプール・雇用平等・トラウマ・インターネット・憲法改正となっている。その講座毎に取り上げられたテーマである。
 私たちがそれらについて考えていくときの、手頃な足場が組まれていると感じた。その意味では、目的に合った、よい営みがなされ、まとめられたものだと驚く。
 この社会に生きる私たちは、まず少なくともここに挙げられたテーマについては、ひととおりの知識や知恵をもつようでなければならないだろう。小手先の説得の技に騙されないためにも。
 いつもながら、よい本には同じような注文をする。それは、索引がほしいということ。何かふと考えたくて、あるいは調べたくて、どこかにあったぞと思うとき、索引は大変便利で重宝する。こういう良い本に索引を付けないのは、一度読んだらもう二度と読まれない、と確信しているためだろうか。どうぞ、また考えていくための土台にしたいとも思うので、索引はぜひ作って戴きたい。詳細にわたるものでなくても適わないから。




Takapan
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