本

『ピアノは知っている 月光の夏』

ホンとの本

『ピアノは知っている 月光の夏』
毛利恒之原作・文
山本静護絵
自由国民社
\1680
2004.8

 特攻に散った若者が最後に弾いたピアノ曲『月光』。物語は、そのシーンよりも、そのピアノを守るために証言した小学校の先生と、その特攻隊員は誰かを捜す部分に多くが割かれる。
 映画にもなり、人々に知られるようになったこの物語を、要点を連ねた絵本にして、子どもたちに分かりやすく知らせようと原作者自ら書き直して作られた本である。
 原作者は福岡県の人。戦争に関する話を多く手がけて物語として世に知らせてくれている。物語は、佐賀県の鳥栖市を舞台としている。小学校の古いピアノを処分しようかというところへ、そのピアノは実は……と退職した教師が話をする、というところから始まる。
 この教師が、物語では吉岡公子先生となっているが、実際は上野歌子先生という。
 この歌子先生は、クリスチャンであるらしい。そのピアノを弾いた人のことを思って、「神に祈りました」というシーンがある。また、毛利さんのほうはどうだか確証がもてないが、特攻隊員の最後の言葉としてわざわざ「賛美歌を歌いながら、私はぶつかっていきます」という手紙を紹介している。
 特攻を別の目的のために美化することは危険だと思う。だが、特攻に出た人、あるいはそこから戻った人のことを、悪く言う権利は誰にもない。そうしたことを踏まえた上で、ここに登場する風間森介さんの心の傷、痛みというものを、正面切って捉えることができたらいい、と願う。
 戦争を起こすような道へ邁進したがっている人々は、とくに。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります