本

『楽器の歴史』

ホンとの本

『楽器の歴史』
佐伯茂樹
河出書房新社
\2100
2008.9

 オーケストラの楽器について、それぞれ解説した本というのはあるだろう。今どんな楽器が使われているかについて、説明するのは、調べさえすれば、そう難しいことではない。写真だって撮れる。
 だが、200年前のオーケストラの楽器は何だったか、と問われるとね私たちはうつむいてしまう。アマデウスの映画で見たぞ、などと言っても、それはそれで映画である。当時のオーケストラとは、要するにどうであったのか、という問題は、分かっていそうで、なかなかはっきりしないものである。
 この本は、楽器の歴史と名を打ってある。ちょっと興味がある人は、少し調べたことがあるかもしれない。豊富な写真と解説で、ときに過去の謎を出題するなどして、楽しめる本となっている。
 ヤマハの楽器博物館の協力があってこそ、この本はできた。通常知られない古の楽器が伝えられる。これはなかなか真似ができない。とにかく過去にどんな楽器があったか、確かな証拠が欲しいし、どんなふうに具体的に使われたのか、それは推測するしかない、ということさえある。これがまたユニークであり、楽しい。
 木管なら木管、金管なら金管とグループ別に、歴史を辿る。どういう過去があるのだろうか。それは昔の演奏会でどのように使われたのか。
 私自身、サックスがフリーメイソンと関わりがあるだろうことなど、知らなかった。こうした歴史上のエピソードや謂われなどもふんだんに掲載されている。しばらく楽しめる。あるいは、音楽を聴きながらでも納得し役立つことがあることだろうと思う。
 ブラスバンド関係者は、手元に一冊置いておきたい。ただ楽譜と一致するように演奏しろ、と注意を促しても、それは一つの作業で終わることになる。ここには活きた楽器の表情や、過去の歴史のなりゆきといったものが溢れている。音楽を愛する人ならば、たぶん退屈しない。めったに見られない楽器の写真がでんと構えているところなど、渋くて楽しい。




Takapan
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