本

『伝えたいふるさとの100話』

ホンとの本

『伝えたいふるさとの100話』
財団法人地域活性化センター
2004.02

 不思議な本である。どのようにして、誰が作ったのか、私はよく知らない。どうしたらこの本が手にはいるのかさえ、分からない。
 都道府県から1〜3人を選出して、各地に伝わるよい話を集めたものである。それは、ときに偉人伝となり、ときに村人たちの協力となる。
 隠れた「いい話」という場合もあるのだが、今の子どもたちにとっては、私たち大人には体験済みのことも、全くの昔話でしかない。かつては、石油ショックを知らない子を家庭教師していたときもあったが、そんなことはもう化石化するくらい古い話だ。きんさんぎんさんさえ、知らないのである。話が通じない。
 野口英世の話も載っている。教科書で知ることもないのだろう。
 だが、多くの話は、私も知らないようなことである。
 英世と同じ福島県には、服部ケサという女性が挙げられている。クリスチャンで、医療の仕事に就き、病院を作り上げた。ハンセン病の病院である。
 滋賀県では、糸賀一雄さんの話が取り上げられた。知的障害者福祉の父と呼ばれているから、今の福井達雨さんの先輩にあたるような立場であると言ってよいのだろうか。この人もクリスチャンである。
 ということで、どうしてもクリスチャンが目につくし、それを取り上げたくなるのであるが、中には日本人ではなかった、ヴォーリズについても紹介されている。最後には日本人として帰化しているから、日本人だといえばそうなのであるが。もちろん彼は、美しい建築を日本に施し、近江兄弟社を設立した人物として知られているあのヴォーリズである。近江兄弟社は、メンソレータム(メンソール+ワセリンの意味の語の造語)を、アメリカのメンソレータム社から販売権を取得して販売していた。30年前の倒産時その商標権などを売り、ロート製薬がそれを得た。そのため、メンタームという名前でしか販売できないが、社としては医療や教育に多大な貢献を今なお続けている。
 からくり儀右衛門や永井隆など、九州にも名の知られた人が多く紹介されているが、はたしてどれほどの人を私たちが記憶しているのだろうか。永井博士のことは、私が信仰を持つ以前からも、九州では常識とされていたが、最近の子はどうなのだろう。
 命を懸けた多くの努力を、無にしてはならない。




Takapan
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