本

『即訳! ふくおか方言集』

ホンとの本

『即訳! ふくおか方言集』
中村萬里編
西日本新聞社
\1300
2005.9

 私的な選択の極致だろうか、博多弁の本である。
 方言に関する資料がすでに多くの人の苦労の末にまとめられている。そのデータをパソコンに打ちこみ、集計した上で、その頻度の多いものから順に揃えていくという製作方法が、最初に明記されている。
 福岡県を筑前・筑後・豊前の三地方に分けての編集である。筑豊や北九州が微妙であるが、おそらく妥当な分類だろう。1頁1項目で、実際の用法も例文で紹介されており、もちろん標準語訳も完備。それより私がよいと思ったのは、その語の意味や訳のみならず、語源や、調査による分析にも触れられている点である。文法的な説明すら時にあり、さすが大学教授の手になる編集だと肯いた。
 やはり私は筑前であり、筑後は少々分からなくなる。八女などは独特だとも言われる。これが豊前となると、下手をすると外国語に近い。よく「九州弁」などと言われるが、薩摩のような完全な外国語までいかなくとも、隣でさえ分からないものなのだ。私たちも、安易に「関西弁」とか「東北弁」とか言うのは、ぜひやめようと思った。
 本当は、これらの例文を土地のベテランの方々に語ってもらった、CDを附録にしてほしかった。方言は、書かれたものでは終わらない。喋ってなんぼのものである。この企画、ぜひお願いしたい。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります