本

『複合犯罪』

ホンとの本

『複合犯罪』
作田明
勉誠出版
\1890
2005.5

 現実の犯罪は、特に現代社会における犯罪は、様々な要因が重なり合い、それぞれが影響し合って発生するものであると考えた方が理解しやすいものとなっている。――「はじめに」に著者が記している。
 これが、題名の由来であろう。
 すみません。凄惨な犯罪の克明なレポート、全部読み通す勇気がありませんでした。  調書のような、簡潔な背景描写から始まり、裁判の証拠資料のような、淡々とした成り行きが語られ、異常な犯行の一部始終が語られる。感情を交えずにとことん説明されていくことが、却って恐ろしさを呼ぶ。
 たんにそのレポートで終わるのかと思われる本であったけれども、最後に、これを重罰化によって防止することはできない、という意見が書かれてある。代替案として、犯罪の処方箋を書くことであるとして、犯罪に対する正確な知識と理性が求められる、と述べられている。
 最後の頁でようやく登場するこの意見こそ、もっと論じてよかったのではないか。もっと検証してよかったのではないか。
 本全体に詳述された5つのレポートのうち、一つを削ってでも、この提案を膨らませてよかったのではないか。
 ただ、報道で伝えられる犯罪、あるいはドラマやアニメで消費される犯罪の描き方は、あまりにも美しすぎるゆえ、その背景にあるどろどろとしたもの、犯罪そのものの惨さや残忍さを、少しでも紹介しようとする意図が含まれているとすれば、それはそれで確かに、知識と理性に訴える面をもつことは間違いない。
 精神科医からのメッセージとして本書は、まだまだ一つの契機に過ぎない。




Takapan
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