本

『ふう! よかった』とっさの時の看護と救急

ホンとの本

『ふう! よかった』
とっさの時の看護と救急
山本保博
学習研究社
\1,300
2003.12

 ハウツー本という表現が昔あった。本とは、文藝の分野と哲学的な分野に分かれるものだといった時代に、安易に実用を目指した、原理抜きの表面を撫でるような分かりやすい記述の本のことを呼んだのである。
 本とは沈思黙考するために読む、などといった昔気質の製作が正統と見られる時代は、まだそれでもよかった。しかし今では、人々がより忙しくなったせいもあろう、一目で一定のことが分かる、新聞見出しのような本が要求されるようになってきた。
 この救急看護の本も、中身の厚みという点では、頼りない。しかし、何かあったときに、すぐさまとりあえず何をしなければならないか、が一目で分かる形で製作されている。イラストもふんだんにある。深みのある本ではないが、何かあったときにすぐに役に立つような気はする。
 それは、この本を軽んじていることではない。やはり必要なのである。手っ取り早く、何が重要で、どんな情報から判断して、怪我や病気から逃れようと努力することができるのか、その知識は大切である。
 ひところ危機マニュアルの必要性が盛んに議論された。今はどうなのか。危機管理能力という問題は、おそろく阪神大震災のときから繰り返し検討されるべき問題となってしまったが、たしかにこうした本は大切である。
 何かあったときに調べればいい、というのは本当である。しかし、それまで少しも読むことなしに、緊急事態になって初めて、あれはどうするのかと調べたり読んだりするゆとりは、多分ない。日頃から、一度でも目を通して、心構え的なものだけでも養っておく必要があるのである。そこのところを、勘違いしてはならない。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります