本

『世界と日本のカエル大図鑑』

ホンとの本

『世界と日本のカエル大図鑑』
松井正文監修
写真と文・関慎太郎
PHP研究所
\2940
2004.7

 専門書からハンディなものまで、幾種類かのカエルの図鑑があることを知っている。そこへ上乗せするには、あまりに子ども向けである。が、子ども向けであることの意義は小さくない。それは、面白がってみてもらううちに、カエルに対する愛着がわく効果と、自然を保護するという強い動機の伝達である。
 最後にまとめて解説してある、カエルに関する知識が、たいへん読みやすい。そして、質と量共に的確な解説となっている。
 日本のカエルは全43種類を載せている。これは、身近な図鑑でもおなじみである。
 世界のカエルは156種類掲載している。必ずしもすべてのすべてではないだろう。だが、これが実に愛嬌のある、あるいは笑ってしまうようなカエルたちである。開いてみると、誰もがほんとうにどこかで笑ってしまうことだろう。
 実際の大きさで写真が収められていることも、カエルを実感させるのによい。しかし、それぞれのカエルが、白い背景に写真を直され、無機質な白い紙の上に置かれているだけの写真の数々はどうなのだろうか。カエルは、カエルとして、その生活環境と切り離しては考えられない。森の中にいるのか、土の上にいるのか、池の中にいるのか、そういったそのカエルらしい生活環境と共に写真として与えられているのではなく、それぞれのカエルがただ個体の標本として、そこに写真になって並んでいるという姿である。
 子どもには、そのほうがいいかもしれない。カエルのユニークさそのものを比較できるので、見やすいことには間違いがない。だから、編集方針として何も間違っているわけではない。
 だから大人の一人として、カエルをその環境と共に見たかった、などと口にしたところで、的を外した声だということは、承知している。これは楽しい図鑑である。
 図鑑には、その目的や読者対象というものがあるのだということを、はっきり意識してしまう図鑑であった。




Takapan
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