本

『福岡市歴史散策』

ホンとの本

『福岡市歴史散策』
福岡地方史研究会編
海鳥社
\1785
2005.12

 これだけの薄い本の中に、福岡市内の歴史的資料がぎっしり詰まっていることに驚く。  エリア別ということで、市内各地域毎に、ポイントが示され、それへのコメントが掲載されている。
 あれは、これなんだ、と肯く記事もしばしば。住んでいると気がつかない、思わぬ歴史的遺産に、改めて感心する。
 それは、京都でも味わった。住んでいれば、まだいつでも行けるとばかりに、どんな歴史的な場所へも、わざわざ行かない。しかし、今にして思えば、ほんとうに数限りない歴史資料がふんだんにある都市であった。
 福岡は、京都より旧い歴史を持つ。京が千年の都なら、博多は二千年の都である。旧いがゆえに、もはや文化というよりも遺跡としてしか見いだせない資料が多く、またドラマも失われてしまい、興味がもたれない面がある。だが、私たちの足もとには、これまた無数の日本の大きな足跡が遺されていることを感じる。
 そんな福岡の歴史が、地元をよく知る方々によってまとめられたのは、うれしいことである。写真も、カラーと白黒が半々に掲載され、内容がよく伝えられている。
 惜しむらくは、その一つ一つについての説明が、あまりに簡素なこと。その次はどうなのだ、それからどうなったのだ、もっと詳しく知りたい、という思いがつきまとうものが殆どである。もちろん、この本の目的はただのガイドであり、そこから先は、また興味をもった各自が資料をあたるべきなのであって、本の責任では一切ない。だが、たとえばせっかく地図がふんだんにあるのだから、アクセス方法についてはだいたい見たら分かるのであって、そのために行を費やすよりは、その分、歴史のほうに説明をかけてもらったほうが、ありがたかったのではないか、とも思う。それは、欄外の頁下方のことだが、そこに「はみだしコラム」がもっとあれば、さらに興味深くガイドとすることができたかもしれない、などと無責任に贅沢なことを思う。




Takapan
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