本

『「ファイル」の仕組みのここがわからなかった!』

ホンとの本

『「ファイル」の仕組みのここがわからなかった!』
唯野司
技術評論社
\1449
2010.6.

 日進月歩と言われるコンピュータの世界において、こうした本をご紹介しても、役立つ通用期間はごく短いものと思われる。ただ、どういう観点から書かれたものが有用であるのかなど、少しばかり敷衍して考えていける問題もそこには含まれると理解する場合には、遠慮無くお勧めしてみようと考える。
 これは、Window7が出て広まってきたという時代の話である。ただし、XP以来のものが非常に多い時代の状況に鑑みて、それも含んだビジネス活用の状況の中で説明がなされている。
 それはそうと、これはひたすら「ファイル」にこだわった本だ。コンピュータとは何もファイルだけのものではない。だが、ユーザーの身になって考えると、要するに自分で作成したデータなり文書なりの管理が一番の関心事なのであるから、それがすなわたファイルだということで、実のところ最も大切な取り扱い分野だと言えるのである。
 しかし、ファイルなどというものは、私のような素人でも十分分かっているような気がすることがある。果たしてそれにこだわった説明に、それほど役立つ情報がついてくるのだろうか。
 心配は杞憂だった。まずこの本は、実に基本的なところから説明をする。しかも、ここが重要なのだが、マニュアルを附属させて、説明書を用意すればいいんでしょ、とばかりに難しい型どおりの説明をしたつもりで、利用者にとっては分からないことがどう調べていくべきなのか全く分からないという状況を見ることの多い昨今である。この本の解説はあまりにも卑近で分かりやすい。イラストも効果的なのだが、実にしょうもないギャグをかませるような仕方で、次々と大切な項目を取り扱っていく。
 すべてQ&A形式で扱われているのも、分かりやすさのポイントであるかもしれない。それがまた、画面の様子を見せると共に、図や太線なりマーキングなりして、親切な設計となっている。はみ出しやトホホ話が欄外にあり、思わず楽しく笑ってしまうエピソードが退屈させない。楽しめるという呼び方が適切であるかどうか分からないが、そのあたり実によくできた本となっている。いや、ここまで楽しく読み進めるコンピュータ実用書には、私も殆どお目にかかったことがない。
 それでいて、専門用語を外すことなく、むしろその用語を適切な喩えによって読者に噛み砕いて示すのだから、著者の力量たるや、大したものである。
 たしかに素人ではあるが、十年単位でコンピュータを使いこなしているかもしれない一人である私にしても、読んでいてへぇと思わせ勉強になることが多々あった。「トラブル解決&回避」と表紙にも記されているが、私も無数のトラブルに遭遇してきた。そのトラブルの原因が、すっきり分かったという項目もあった。
 このように楽しく役立つという点で、この本は大いにお勧めしたいものである。




Takapan
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