『ロジカル・ファシリテーション』
加藤彰
PHPビジネス新書
\1000+
2014.5.
きっかけは、教会だった。総会というのは、どこの組織にもあるものだが、教会も、宗教法人法に基づいて運営されていくべきとあらば、総会を開催する必要がある。教会によりその様子は異なり、皆意見が一致ですね、とすんなり進められることもあれば、何かしら問題点を指摘する場合もある。もちろん、それは必要なことだ。しかしまた、どうにもこういうときに言わせてもらうというようにして、自説を振りまく人もいたりする。中には、日頃教会の礼拝には殆ど来ないのに、総会のときだけ顔を見せて、かきまわすような言動を執拗にする、という困り者もいるらしく、SNSにそういう悩みが打ち明けられていることもあった。教会といっても、信仰の度合いも性格も様々であり、しかも一概にどれが正しく誰が間違っているなどと言いづらい面もあり、意見が異なることやそれを戦わせることが必ずしも問題であるとばかりも言えない事情もある。
異なる意見が出て、よりよい決定に導かれるというのが理想であるかもしれない。アウフヘーベン効果は期待できる。しかし、無毛な時間を過ごす場合も、やはりある。私は時に、その交通整理をすることがあった。論点が無駄にずれている場合や、話がまとまりかけては自分の関心事に走る発言で混乱に陥ったようなとき、論点を元に戻す、あるいはここでどちらかに一度決めましょう、みたいにスムーズに事を運ぶように促す発言をするわけである。それでいくらか無意味な時間は減るわけだが、時にそういう交通整理さえはねのける、難しいタイプの人もいる。なにせ、会社の役員のようにそれなりに会議に慣れている人たちばかりではない。いやここで自分は言わせてもらう、などと感情で走る人を止めるのは簡単ではない。
そういうところへ、ファシリテーターなる言葉を聞いた。おや、私がやっていたような役割を自覚して会議に加わる人が、話し合いをスムーズにもっていく役割を担うというではないか。どういうことなのだ、と興味をもって調べてみると、なかなかおもしろい。このコンセプトは一度味わっておいて損はないと思い、本を探してみた。
これは新書形式であるが、評判がよかった。「60分」図解トレーニングとあるから初心者向けなのかと思いきや、人々の声として、これはとても60分の入門版などではない、ひじょうに高度なことが取り上げられていて深い、というのがあり、私も挑戦してみることにした。
たしかに、これは60分では方がつかない。決して、初心者向けなどではない。しかし、分かりやすい。想定されている状況が、教会の話し合いとは違うにしろ、一定の実例も交え、やるべきこと、その理由などが的確に紹介されていく。見開きで解決されていくのもビジネス書に必要な分かりやすさなのだろうが、取り組みやすい形式である。オレンジ色だけが付けられているが、これがまたたいそう見やすく、よくできている。この手の本としても、かなり実用的で、また根拠が適切に付けられている部類ではないだろうか。
だがそもそも、こうした役割は自分には関係がない、と言いたい人もきっといることだろう。自分は自分の主張をしたい、自分の言うとおりに周りを従えたい、そういう欲求が強すぎて、調整役などもってのほかだ、というタイプである。教会では、こういう人は、自己義認をするタイプとされ、かなり厳しく扱われている。だのに、現実にそういう人もいたりする。やはり、聖書を読むということは、大切なことなのだと思わざるをえない