本

『栄養成分の事典』

ホンとの本

『栄養成分の事典』
則岡孝子監修
新星出版社
\1575
2006.7

 見開きページでまとめてあり、カラーでよい紙が用いてあり、イラストや図解が豊富で親しみやすい。それでいて、詳しいデータがきちんと載せてあり、手近なハウツー本の域を越えている。
 健康志向は平和なこの国にあふれているが、いわば週刊誌的なネタに振り回されて、体系的な理解、自分のからだについての原理的な理解というものは、貧弱であるように見える。ビタミンCは摂れば摂るほどよいのだと考えたり、サプリ錠剤をたくさん呑んでいるから大丈夫だとか、危うい考えを信念のように貫いている人も少なくない。
 摂取過剰に問題があることが分かりやすく述べてあるのも、この本のよいところだ。また、どのように摂取していく必要があるのか、についてのアドバイスも豊富である。たとえば、ポリフェノールは効き目が早い反面、2〜3時間の効果しか期待できず、一度に多量ではなく、毎日少しずつ摂取する必要があることが指摘されている。
 また、いわゆる「血液さらさら」の項目や、「肩こり・腰痛」「高脂血症」など気になる症状別の解説があり、健康に関する知識が縦横に展開されているのも、分かりやすくていい。
 はたしてこれらを全部気にしていると、どういう生活になるのか、考えるだけでも恐ろしい。全部完璧にしなければ、ともがいていると、心の健康によろしくない。かといって、もうどうなってもいい、と不摂生をするのが、愛する人々の心を苦しめることにも気づく必要がある。
 私たちは、案外沢山の知識をもちすぎるのかもしれない。
 早寝早起き、姿勢を正してよく歩き、よく噛んでいろいろなものを食べる。こうした基本的な昔からの知恵だけで、この本に書いてあることは、実はすべてまかなえるような気もする。逆説的かもしれないが、これだけ詳しく親切な本を覗きながら、健康の極意は、言い伝えられている常識だけでいいのではないか、と強く思えてきたのであった。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります