本

『マンガ・読むだけでチョットよくなるあなたの英会話』

ホンとの本

『マンガ・読むだけでチョットよくなるあなたの英会話』
本城武則
実業之日本社
\1260
2008.5

 愉快な本である。ちょっと雑な線のマンガであるが、いかにも週刊誌的で読みやすい。よけいな飾りがないからだ。テンポもいいし、何が言いたいのかもはっきりと伝わりやすい。マンガとしてうまくいっているだろうと思う。
 さて、著者は英会話について独自の指導法を考え出し、実践している。福岡の生まれであり、しかも学校での英語の成績はかなり悪かったというので、親しみをもてるかもしれない。飛行機が好きで渡米したものの、英語に苦労。それが、ある人との出会いでみるみる英会話ができるようになり、むしろそちらのほうを仕事とするようになっていったという具合である。
 英会話がうまくなりたくて、ということでこの本を手にする人は当然いるだろう。しかし、この本には、私のように、異文化を理解するとはどういうことか、そのための実戦的ヒントとして読む読者もいるように思う。マンガを見ていただくとすぐに分かるが、この本の視点は、始終異文化体験である。英語を使う人々は、どのような目で世界を見ているか、が問題となる。これが、私にとり役に立つのである。
 聖書の文化は、西欧を含め、外国から伝わってきている。その元の文化の考え方を無視すると、独りよがりの解釈になってしまいかねない。どういうつもりで言っているのか、そのような考え方をするのか、それは言語とその言語でどう捉えるかにかかってくるのである。
 従来の英会話学校で立派なネイティブに習った英語がどうして役立たないのか、そういう、ちょっと商売絡みの理由も明らかにしてある。
 そこで、気づいたのだが、この著者も経験していることであるのに、本の中でとくに何も触れられていない点が一つあるようなのだ。それは、著者が、英語で困っていたとき、「ノルウェー人教官から英語を教わる」とプロフィールにある点である。これで、3ヶ月で話せるようになっている。
 ここに、私はある原理を見ている。それは、英語に関してネイティブではない人と英語を共にすると分かりやすい、ということである。この教官はおそらく公用語としてはノルウェー語で生活していたはずである。しかし、アメリカで生活している。いわゆるネイティブでない英語の使い手は、丁寧な発音を心がけるし、スラングだらけというわけではなく、教科書的な英語でコミュニケーションをはかろうとすることだろう。英語として、分かりやすいのである。私はだから、英語を第二外国語としているような人と話してみると非常に分かりやすいということを、経験的に知っている。ここで培った英語へのオープンな感覚は、次のステップとして、ネイティブとの接触も可能としていくであろう。
 ともかく、対人恐怖症のような日本人の姿勢を揶揄するかというほどにまでこきおろすマンガによって、英語で話しかける度胸でもついてくるならば、何よりである。
 私はもちろんまともに喋れないに等しい。だが、この本の中で描かれている60歳の人がニュースの内容を英語的には殆ど分からないにも拘わらず理解してしまった、という例のごとく、そこそこ情報を把握していくことと、じっくり聞いてくれる人には最低限の意志や感情を伝えていくことなどは、自分の中で気づいてやってみていたことである。逆に言えば、私の感じていた教育法は、理に適っていたということである。
 ともかく文化の違いを、簡潔になかなか楽しく知らせてくれる。お勧めの一冊である。




Takapan
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