本

『ステキな英文フレーズ1340』

ホンとの本

『ステキな英文フレーズ1340』
ブティック・ムックno.680
ブティック社
\1575
2007.12

 全編、短い英文と日本語の意味との対訳ばかり。それをテーマ毎に分けて記してあり、目的の事柄について、自分の好みに合ったフレーズを探すことができる。
 表紙によると、「各種クラフト、グリーティングカード&アルバム作り、ペインティング、刺しゅうなどにすぐ使える」とある。
 Tシャツやさまざまな布地に、英語が記してある。日本語だとそこに意味を読みとってしまうから、一見して意味として伝わりにくい英語がカッコイイと感じられるのだろうか。
 Engrish.com というサイトがある。間違い英語の写真が飾られているだけのサイトである。英語らしく見えるけれども、とんでもない勘違いであり、それが多分ミスというよりも思い込みからきている場合が多く、間違いに当人が気づいていないであろうケース、あるいは気づいていても、まあいいかと考えているケースが多々あることが予想される。
 だから、この本は、正しい英文を提案しているのかもしれない。いや、そんな動機ではないのだろうが、ちょっとしたメッセージにも、カッコイイ英文がお手軽に探せるというメリットを謳っている。
 具体的なもの、抽象的なテーマで集められた後、偉人の言葉から選ばれた頁があり、諺や世界の挨拶に加えて、「聖書の言葉」という項目もある。これがあるために、ここに取り上げた次第である。
 ただ、聖書はヘブル語やギリシア語が基本的に原点の原語であり、英語は翻訳語に過ぎない。日本語をわざわざ英語にしたからといって、聖書らしくなるわけでも何でもない。そのあたり、キリスト教は外国の――英語の――宗教である、という偏見や思い込みが隠されている。まさに、Engrish.com の世界である。
 また、ゲーテやアンネ・フランクの言葉が英語で並んでいるのも、違和感を覚える。その言葉の意味を感じたいならば、日本語でいい。でなければ、ドイツ語そのままで記せばいい。どうしてそれを英語にしなければならないのか、私には理解できない。いかにも、英語こそカッコイイ、と言いたいのだろうか。
 近年、日本語、とくに漢字を記したTシャツが外国人に人気があるという。「侍」とか「誠」とかいう文字がどーんと載ったシャツを着ている外国人観光客を見ることもある。日本人はそれを見てクスッと笑ってしまうことがあるが、日本人は日常的にそんなふうにしている。しかも、どうもおかしい日本語のグッズを外国人がもっているのを見て変だと感じる以上に、日本人が持っているものに書かれている英語を見て、あれはなんだと呆れられているのかと思うと、恥ずかしくてたまらない気持ちになることがある。
 英文が「ステキ」だと表紙に、そしてタイトルにあるが、それはどうしてだろう。どんな考え方がその背後に隠れているのか、そちらのほうを、私は知りたいものだと感じた。




Takapan
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