本

『学校図書館発・絵本ガイドブック』

ホンとの本

『学校図書館発・絵本ガイドブック』
三宅興子・浅野法子・鈴木穂波
翰林書房
\1575
2004.9

 頁をめくるとまず最初の前書きのあるべき場所に、「小・中学生にも絵本を!」というタイトルが見える。
 学校の図書室に、絵本がないのである。ここに絵本を導入すべきだ、というのがこの本の主張である。
 中でなされているのは、ただただ絵本の紹介。あるいは感想、勧めといったものである。そこには、私の知らない絵本も沢山ある。逆に言うと、知っている絵本がかなりあるとも言える。私も、この著者たちたる司書や文学部教授と、似通った視線をもっているのかもしれない、と勇気づけられる。
 テクスト自体を読みこなすのに、労力や前提知識、才能のようなものを必要とする、高級に文学作品についてのみ、とかく専門家は議論しようとする。だが、そこへ辿り着くまでのハードルが高い設定を強要しておいて、文学の議論をしようとするというのは、どうなのか。それだけの時間と力とを割くとのできない人々を、排除するためだけの方策ではないのか。
 そんな疑問さえ沸いてくる。
 絵本なら、誰でも読める。そして、行間や絵の隙間に溢れたものを、各自が自由に拾い集めることができる。そこには想像力と深い経験が必要であるかもしれないが、専門用語でガードされただけのような象牙の塔は、脆さだけを呈するであろう。
 感受性豊かな小学生中学生に、自由に心を語らせる。あるいは、心との対話をさせる。絵本は、なんと素晴らしい場なのだろうと思う。
 しかも、実は、読み聞かせがいい。絵本を読み聞かせるとき、必ず子どもたちの目が輝き、魂がこちらを向いているのを、私は知っている。
 そんな瞬間を知っている大人、絵本の良さを少なくとも経験的に知っている大人に、この本はすばらしい道標となりうるだろう。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります