本

『絵本デザイン』

ホンとの本

『絵本デザイン』
南雲治嘉
グラフィック社
\1890
2006.12

 サブタイトルは「あなたが感動の絵本を作るために」となっている。
 何も、人が次々と感動していかなくてもいいから、作った本人が感動するくらいで十分、などと考えてしまうところが浅はかなのだが、それにしても、この本は、大したものである。驚きの本であった。
 絵本を作るノウハウを、これほどに客観的に歴然と示してある本が、かつてあっただろうか。
 絵本というと、どうしても、趣味や好き嫌いが伴う。評者により、全然違う評価がなされることはよくある。スピリチュアルで話題の誰とかも、ある絵本のスピリットを感じることができず、自分のトラウマのようなもののせいでかどうか知らないが、一方的に酷評していた。
 作家にしても、特定の数人の作家を取材して、そのテクニックや絵本観を紹介する、というのが、従来のこの手の本の作成方針であった。だがこれは、もっと技法的である。ストーリーの類型やレイアウトの基本、配色の意味から、画材により印刷した場合にどのような影響が出るか、に至るまで、絵本作成のためのあらゆるノウハウが、ここに詰まっているように見える。
 これから絵本を作ろうという人は、今後、この本に目を通していないと、勉強不足と言われそうである。もちろん、直感的に自分の世界のために最もよいものを選択することのできる、天才肌の人には、こんなちまちました理論や技術など、無縁であるかもしれない。だが、99%以上いることは間違いない凡人たちにとっては、この本にまとめられていることが、規準(カノン)となるのではないか、と思われるほどの充実ぶりである。
 もちろん、絵本についての素人に過ぎない私がこうして感動しているだけで、実はそうでもない、ということは十分に考えられる。しかし、さまざまな類型の紹介など、ほんとうに勉強になると思われる。
 おとなが喜ぶ、絵本もどきが多く出版されている最近の世の中で、真に絵本の道を貫いている作品に出合うと、おとなもまた、うれしく感じるものではないだろうか。




Takapan
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