本

『絵でわかる子どもの心』

ホンとの本

『絵でわかる子どもの心』
名張淑子
学陽書房
\1,400
2003.10

 マナ色彩心理研究所を主催している著者は、スペインでの仕事から日本に戻ったとき、長男が学校でいじめられ、その描いた絵を見て愕然としたという。世界から切り離された寂しさを物語る暗い絵を見て、絵にはこんなにも心が現れてしまうものかと驚異の眼差しを送った。
 色彩、構図、勢い……無心で描く絵の中に、その人の心が表現される、ということを想像するには難くない。だが、分析は慎重に行わなければならない。安易に他人の心を見抜いた気になってはならない。だが、多くの子どもの描いた絵については、その子の立場や状況が実際よく現れていることが分かっていく。
 子どもの絵に描かれる、太陽や山は父親を、海や森は母親を象徴しているという。太陽の色や描かれ方によって、父親との関係がどうあるのかが示されるらしい。ときに暖かく見守っている父親、ときに厳しすぎる父親、ときに離婚して不在となった父親への恋慕……。
 その分析は、やはりプロならではのもの。色彩と生活との関係を専門に指導し続けている著者ならではのものでもあるから、くれぐれも素人が強気で判断してはならない。ただ、なんかこれは……という気がしたら、こうした専門家の判断を仰ぐ道を選ぶこともできるので、私たちも基礎知識があって困ることはないだろう。
 子どもの絵ということでは、私も自分自身思い出すことがある。
 小学一年のとき、担任の教師が家庭訪問で、私の精神状態はどうだろうかと母に訊いた。私の描いた絵を見てのことである。その絵には、実際の人の姿にはなかった色で服が塗られていたのである。しかも、ぐちゃぐちゃと全部の色のクレヨンを使って。
 私は問いただされた。それで私が答えたことはこうだった。クレヨンの一色だけを使うとその色が早くなくなってしまい、もったいない。それで全部のクレヨンが均等に減っていくように、全部の色を使ったのだ、と。
 大笑いになったそうだが、果たして、そうした私の精神の中には、何か判断すべきところがあったのだろうか。著者に尋ねてみたいものである。




Takapan
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