本

『Do! ソシオロジー』

ホンとの本

『Do! ソシオロジー』
友枝敏雄・山田真茂留編
有斐閣アルマ
\1890
2007.4

 大学生のテキストとして、有斐閣がシリーズ化している中の一冊。「現代日本を社会学で診る」という、気持ちのこもったサブタイトルが付されている。
 言うまでもなく、これは社会学のテキストである。教育的配慮が整った、よいテキストである。章毎にテーマを変え、章末には発展課題と共に、用語解説と参考文献の案内が加えられている。
 大学生は、一般の本をどんと与えられてそこから学ぶものだ、というふうに捉えていた私からすれば、これは大学生を幼くみてしまっているのでは、という気もするが、今はそうでなければならない事情があるのだろう。
 それにしても、切り口がいい。社会学そのものを問うことから始まり、引きこもりの問題や自己実現、少年犯罪から地域社会と話がしだいに広く、まことに社会学に相応しい世界へと導いてくれる。出版業に的を絞っての文化現象を探り、ジェンダーフリーを語ると共にそれを攻撃する存在を明らかにしていく。そして視野は国家からグローバル社会へと遠くなるのである。
 とくに私が注目したのは、「今日的な関係性」を論じた第一章である。
 若者の人付き合いなどについて、大人が批判を加え、引きこもりなるレッテルを貼るということが、最近の出来事である。しかし、それは若者たちの精一杯の方法でもあって、それを非難することでは、何も解決しないばかりか、大人そのものの中に潜む、引きこもりを生み出した要因のようなものをも、見逃してしまうことになりかねない。
 純粋な関係を求める若者たちが、互いに傷つけることのないように緊迫した状況の中に、大人が軽々しく介入しすぎているのかもしれない。ピュアなものを理想に掲げる若者たちに、適切な居場所を用意することは、できるのだろうか。むしろ、大人の責任が問われていることに、もっと気を払うべきであろうと思う。
 社会において顕著な現象のいくつかが、ここで明かされている。無責任なコメンテーターをテレビで見かけることが多いこのごろだが、それよりは、この小さな本を読むほうが、どれほど有意義で力になるかしれない。
 高校生でもこのような文章に触れておくと、国語の問題でも戸惑わないでよいかもしれない。様々な論点を知っておくことは、大切な事柄である。




Takapan
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