本

『読書の時間によむ本 小学6年生』

ホンとの本

『読書の時間によむ本 小学6年生』
西本鶏介編
ポプラ社
\700
2003.3

 子どもに読ませたい本というものを親は考える。世界名作の誉れ高い本はどうだろうか。多分に、親自身は読んだこともないものだ。親が読んで面白いものを読ませたい。もっとも、子どもには子どもの興味があるので、親の感情の押しつけは最高にまずい。それでいて、よい本との出会いは経験して欲しい……。
 なんとも贅沢な親の悩みだ。問題は、親自身が読書好きかどうかに関するところが大きいのだが、それにしても、自分でも子どもに勧める本くらいは読んでおかなければ、共通の話題が作れないかもしれない。それなら、短い小説はどうだろう。短いとくれば、芥川? それもいい。それもいいが、もっと幅広く、子どもの心に素直に触れてくれる短編小説集はないものだろうか。いろいろな作家の。
 民話や童話を広く研究する編者の見識により、ここに、学年別の短編小説集ができた。私は、そのうちの6年生のものを読んだ。
 収録されているのは、宮沢賢治『いちょうの実』、杉みき子『防風林のできごと』、三木卓『受験』、佐藤さとる『カッパと三日月』、芥川龍之介『白』、森忠明『少年電報配達員』、岡本喬『腕立てけんすい』、柏葉幸子『春に会う』、久保喬『赤い帆の舟』、花岡大学『うろこ雲』の十編。教科書体で、学校の教科書と同じ感覚で読むことができるのも魅力だし、何より、それぞれが短く、読書が苦手な子も、無理なく読める。やや甘いくらいにふりがなも付けられているので、たぶん教科書より読みやすい。内容的にも、どの話も、子ども心を引き込んでいく世界をもっているので、なるほど編者もうまく選んだものだと驚く。「読書のたのしさが実感できる」という宣伝コピーはたんなる看板ではないらしい。
 小学生の親が読んでも面白い。忘れかけていたものを取り戻させてくれるような気がする。あのころの視点、世界が広かった時期の感じ方が、よみがえってくる。このシリーズ、各学年のものが出ており、それぞれが安価なので、小学生の親・保護者のためにお勧めすることができる。
 こうした本から、また読書の世界が広がっていくものだ。




Takapan
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