本

『地震・津波と火山の事典』

ホンとの本

『地震・津波と火山の事典』
東京大学地震研究所監修
藤井敏嗣・纐纈一起編
丸善株式会社
\6825
2008.3

 まあ、凄い本である。見た目で価格を量ると痛い目に遭う。一般受けを狙って読みやすく、手に取りやすく作られた本ではない。
 大学生のためのテキストにしても、相当専門的であるような気がする。これでも、数式をかなり省いてあるそうだから、その道の専門というのは、どれほど大変な研究をしているのかと驚かされる。
 事は私たちの生命や財産に及ぶ。地震は、毎年日本を騒がせている。多くの被害に遭われた方々は、その生活もだが、精神的にも立ち直れないでいることが多い。阪神淡路大震災にしても、忘れることなど決してできないのである。
 地震予知のための研究に膨大な費用と手間暇がかけられている。それがどれほど役に立っているのか、と素人はすぐにかみつく。目にも鮮やかなドラマチックな成果が出なければ、すべて費用は無駄だと言うのである。それは気の毒だ。ちょっとした流体にしても、完全な予測は不可能なのだから、気象全般はやはり確率の世界でしか話ができないところがあることだろう。地震となると、いつどうやって起こるのかなど、分かるはずがない。それを、観測した瞬間に情報を飛ばすというだけでも、ものすごいことではないかと私は思うのだが、それでどうやって被害を防ぐのだと言われなければならない研究者が、気の毒に思える。
 さて、本書は、カラーで、高校の地学の続きを実に詳しく、そして敢えて言うが、分かりやすく解説してくれている。ある程度の知識と関心があり、丁寧に読み解く気持ちのある人にとっては、実にありがたい情報源であることは間違いない。冒頭に記してあるように、高校で地学自体を選択する生徒が稀であることを思うとき、中学で学んだ程度の知識しか、社会人は持ち合わせていないことを銘記しておかなければならない。津波警報が出ても避難する姿勢のない人が9割もいるような現実は、やはり異常だと言わなければならない。
 この本は、素人がおいそれと買って家に置いておける本ではないかもしれない。だが、地震や津波は、日頃の備えも大切だと言われる。聖書には「目を覚ましていなさい」と記されているが、まさにそのような姿勢で心得ておきたいことがたくさんある。この本は、それらを原理から教えてくれている。




Takapan
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