本

『あらすじダイジェスト世界の名作100を読む』

ホンとの本

『あらすじダイジェスト世界の名作100を読む』
永塚けさ江
幻冬舎
\1,200
2003.12

 青少年があまりにも本を読まなくなったというから、せめて文学作品についての常識だけでも知ってもらおうと、あるいはあわよくばそこから文学に目覚めてほしいがゆえに、文学作品のダイジェスト版を作ることが、少々流行している。もしかすると大して売れないかもしれないけれど……。
 ところが、皮肉なことに、この本はよく売れるらしい。それも、購買層は、若者ではなく、十分な大人だそうだ。
 かくいう私もまた、この手の本は大好きだ。たしかに皮肉なことなのだが、多少は文学のことを知っているとか、多少なりとも読んだことがあるからこそ、あらためてそのまとめのような本に興味が湧くのである。何の予備知識もなく、本を読まない者がこういうダイジェストを読もうとするわけではない。
 今回、海外の小説・戯曲・詩集についてまとめたこの本を読んでみた。楽しかった。――たしかに、物語を読むという快感を思えば、あらすじを数行で述べてしまうというのは、いかにも味気ない。しかし、自分にとってつまらない作品を長い時間をかけて読むという行為が、人生の上でもったいないと感じるようになった世代にとっては、できるだけよいものに触れたいと願う気持ちが強い。品定めをして、なるほどそんな小説なのか、ならばひとつ読んでみたいものだ、と興味の起こる小説を手に取りたいではないか。
 この本は無理がない。それに、筆者が、ほんとうに小説というものを愛しているという気持ちがひしひしと伝わってくるような著述なのである。
 一作品は2頁にまとめられている。まず作者とその代表作一つのタイトル、その発表年が掲げられる。その内容を一行でまとめたリードが続き、本文では、作者のプロフィールが2行程度で記される。それからあらすじが10行前後。最後に、ハイライトと称して、作品の一部を原文――もちろん日本語訳ではあるが――で抜き出している。この形式は、最後まで変わらない。だからまた、安心して拾って読むことができる。
 最新の作品でも、40年の月日を数えるものである。もはや古典と呼ぶべきかもしれない。でもたしかに、題は有名だとか読んでみたいと思ったことがあるとかいう本が多い。こんな紹介書、ちょっと癖になるかもしれない。




Takapan
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