本

『魅せるデザイン、語るレイアウト。』

ホンとの本

『魅せるデザイン、語るレイアウト。』
アレフ・ゼロ
MdN
\2600+
2005.10.

 デザインのテキストが欲しい、そんなふうに思う時がある。それは、何か目の前に、クリアしたい目標があるからで、そのために何かヒントが欲しい、という思いが本を探させるのである。もちろん、そんなことをしても気休めにしかならないということは覚悟している。しかし、良いものを見ていく経験を重ねることで、目が肥えていくとか、感覚が身につくとかいうことは理解できる。だから、ただ作品の見本が並んでいるだのような本でも、デザインのために役立つことは分かっているつもりだ。でもそれで、自分が何かを創造できるかというと、これがダメなのだ。
 では、このようにすればよい、と方法らしいものが書かれてあるものがあったとしても、しょせんそれは他人のデザインである。それと同じことをするわけにはゆかない。アイディアが新しく生まれてくることは期待できない。
 古くて今は出回っていないものについては、ネットの紹介を見ながら探すが、これがまた頼りない。中身が見られるわけではないから、いよいよこれが自分に役立つか、自分の好みに合っているか、全く分からないのだ。そこへきて本書は、カスタマーの声の中にあった、次のようなフレーズが目を惹いた。ここには理論がある、というのだ。
 そう、案外この理論というのは、大抵の本では遠慮がちである。何がどうだからこのデザインはこうなのだ、という説明をきっぱりとぶつけてくる本は、案外少ないような気がする。以前に、デザインのルールを示すものは、実例もさることながら、そのデザインの極意のようなものが理論的に告げられていた。それは印象に残り、影響をいまも与えている。
 今回も、それを期待してしまった。そして、届いたものを見て、期待を裏切らなかったと思っている。実例を並べているばかりなのだが、そのどこがどうなのか、理論的な説明事項が筋を通している。全然別の商品なのだが、広告デザインとしてのコンセプトが同じだということもよく伝わってくる。
 また、これは広告だけの問題ではない。本書が秀でているのは、これが雑誌の見開き頁のデザインだということだ。この頁感覚というものが、ただのチラシデザインからだと見えてこない。また、読ませる技術としても、文字で埋まる誌面を心地よくひとに届ける目的を全うさせるために大切なものだと教えられる。文字の配置を学ぶためには、この雑誌の記事を集めた見本は実に重宝する。
 私としては、教会の案内を意識していただけである。それはチラシでもあろうし、トラクト、あるいは教会案内のパンフでもいい。伝えたいメッセージを読ませるためのものでもあるかもしれない。この目的が、この誌面のためのアドバイスにけっこう適うのだ。読ませるための様々なキーワードが、本書の見開きの中でまず際立ち、それからサンプルが並び、その一つひとつにテーマに沿った鑑賞の観点を教えてくれる。
 世間には、なんとデザインのヒントが鏤められていることだろう。NHKでもデザインのための番組が増えているが、その直感的な面白さもさることながら、プロが制作する場合に頭に置く、理論の言葉というものは、案外大切なものだということがよく分かる。私にはこのようなやり方での本が、どこかで必要だった。
 そして、少しばかり古い本であると、かなり安価に手に入る場合がある。私が本書に注目したのも、そのためだ。本の制作者には利益が入らないシステムであり申し訳ないが、しかしなかなか探しても入手できないものが安く入手できるという制度は、ありがたいものである。




Takapan
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