本

『イレズミ牧師とツッパリ少年たち』

ホンとの本

『イレズミ牧師とツッパリ少年たち』
金沢泰裕
集英社文庫
\539
2004.4

 珍しく、文庫をご紹介。2000年に単行本としてすでに発行されていたものを、文庫化したそうである。
 ミッション・バラバという団体が、キリスト教の世界にある。元ヤクザなどの人々が、時に派手なパフォーマンスもしながら、福音を伝えているものである。
 金沢牧師は、その一員としての活動もさることながら、一牧師として「弟子教会」を導きながら、ワルな青少年たちの救いに奔走している。
 まことに、頭が下がる。私なんかも、喝を入れられそうである。
 暴走族からヤクザとしての日々、覚醒剤に溺れたこと、指を詰めたときの様子など、ちょっと、自分のしてきた悪事を書きすぎるかな、と思われないこともないが、そこから神に出会った有様を伝えるためにも、必要な自伝だったのだろう。また、そうやって自分を裸にすることも、金沢牧師なりの「けじめ」だったのだろう。
 不思議なもので、こうした人の履歴を垣間見ると、「自分はこれほどまでの悪を行ったわけではない」という気持ちが、人間には浮かんでくるものだ。たしかに、見た目にはそういう言明も可能なのだが、クリスチャンとはまた不思議なもので、自分もまたそうだ、というふうに考えてしまうことができるものである。
 路傍伝道していても、歩いてくる若者を見て、「あいつはシャブ漬けや」と見抜く。話しかけ、教会に誘い、そこから立ち直っていく少年のエピソードも記されている。
 ヤクザとしてのどこか一途な性格が、伝道にも妥協を許さない。たんにマスコミで騒がれるだけで終わるようなことなく、まさに「弟子」であり続けて戴きたい。マスコミで取り上げられると、また沢山の依頼が舞い込み大変だろうが、その関係で講演などの機会も与えられ、いくらかでも牧師一家の生活が助かるのであれは、恵みであろう。
 三人のお子さんが、よい方向に育っているというのは、この牧師一家の祝福である。金沢牧師に与えられている大きな恵みである。このお子さんたちの葛藤みたいなものは、この本には描かれていないが、それもまた、牧師の関心が外へ向く一つの要素となっているといえるだろう。
 そして、忘れてはならないのが、金沢牧師の父親の祈りである。その死と、彼の救いとがすれ違うかのように惹き起こっていた。
 金沢牧師の背中をポンと押したのが、アーサー・ホーランド牧師。私は一度だけお目にかかったが、こちらがまた面白いので、ご存知でない方は、検索で公式頁をご覧ください。




Takapan
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