本

『電磁波被爆』

ホンとの本

『電磁波被爆』
船瀬俊介
双葉社
\1,300
2003.11

 サブタイトルに「ケータイ・家電が危ない!」とあるが、たぶん最も強力に主張したいのは、携帯電話のことであるに違いない。
 私も、携帯電話の出す電波については、かなり危機感をもっている。電車の中で何人もが携帯電話を使っていると――話していなければよいとは思わない。メールを飛ばすのは同じことだし、待機しているときにも電波を撒き散らしているのだ――、電子レンジの中にいるような気分になってくる。実際、私は頭に何か気持ちのよくない刺激を感じるのである。
 この本の著者も、携帯電話を使うと違和感が頭に感じられるという。
 それほどの私だから、こういう本は実に助かる。あまりにも商売がうまくできあがっているために、世の中では携帯電話への批判など皆無であるかのような印象さえあるが、それは、タバコの害が報道されるようになったのが、タバコのコマーシャルが近年禁止されてから後のことでしかないことと同様である。今は、タバコが害悪であり暴力であるという意見がもみ消されていた時代と同じように、携帯電話の害悪については、発言が封じられているのである。
 私よりもっと過激に、こうした問題を徹底追及し、広めようとするパワーが、この本には感じられる。そこまで言っていいのだろうか、という思いさえ私の中に浮かんでくる。あるいは、本当にそうだろうか、と疑いが起こる場合さえある。あまりにも害ばかり述べていくのも、どうだろうか、という気にならないわけではない。
 しかし、著者は、携帯電話を壊滅せよと言っているのではない。たとえばイヤホンを利用することで、本人への危険はいくらか回避できると書いてある。携帯をなくてというのではなく、携帯をどう利用すれば安全になれるか、を提案しようというのである。
 そうであるにしても、ガンや障害を生む携帯電話について、いい顔をしていないのも間違いがない。危険性のアピールが、実に尖鋭的である。いや、私から見てもかなり過激で、もう携帯電話を使う人間はたまらない被害にすぐにでも遭うのであろうかという気にさえなってくる。
 でも実際、携帯電話の電磁波を浴び続けるとどういう障害が出てくるかは、まだ実験されていないので、分からないのである。今それを浴び続けている人々が、将来どういうふうになっていくかで、それがようやくいくらか分かり始める。いわば、今サルのように携帯電話に熱中している人々は、人体実験を受けているのと同じである。これの危険性はどのくらいあるのかが、これらのサルたちによって実験され、データが集められ始めているのである。
 携帯電話会社の利権が絡むので、政治権力の側は、おいそれと携帯電話の不利なデータは紹介しない。国の基準に叶っているから、という理由で涼しい顔を人はするが、この日本の基準事態が、西欧諸国の中ではかなり高い数字になっているということさえ、知らされていない。いずれにしても、携帯電話様々なのであるから、その悪い点は報道されてこないのである。
 しかしこの本には、通常流れてこない多くの情報が隠されている。電車の中で小さな画面に熱中している人が、一人でも二人でも、この本を読んで、少しでも怖がってくれたらいいな、と願わざるをえない。




Takapan
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