『大学マップ』
小林哲夫
ちくまプリマー新書431
\900+
2023.7.
大学の紹介をひたすら続ける本。見開きの左側の頁は、概ねデータになっている。たとえば、「司法試験合格者」では、100人以上120人未満が何々大と何々大、50人以上70人未満が何々大、というようにリストアップされている。その下には「司法試験合格率」があり、60%以上70%未満が何々大、という具合である。
あらゆる関心事を定点として、こうしたデータが1冊の半分近くを占めている。「特色・進路・強みから見つけよう!」というサブタイトルからすると、受験生や高校生が、大学を選ぶときの資料を提供しようとしていることが分かる。単に偏差値がどうとか、入試科目がどうとかいうことで選ぶわけではない。そこで何をするか、そして何を目指すか、に特化した資料なのである。
先の司法試験のデータでいくと、早稲田大は、合格者数では100人以上のトップに掲げられている。だが、合格率でいくと、第三のランクの30%以上50%未満である。これをどう捉えるか、は受験生にかかっているから、私は価値判断はしないが、このようにいろいろな角度からデータに触れると自分の希望する道に相応しい大学が見つかるかもしれない、というわけである。そこで、本の題は「大学マップ」となっている。もちろん、それは図形的な地図ではなく、こうしたランキング的なデータのことをいっている。
まず初めには、「これからの大学はどうなる?」ということで、国立大学と公立大学、私立大学の立場のようなものが説明され、さらに宗教系大学の動向、新設大学の特徴などが、きびきびと指摘されている。この簡潔感が、本書の特徴であろう。
その後は、就職関係である。特に、就職率という数字には騙されないようにと警告する。留年の場合に、数字に反映されていないことがあるという。卒業生ではないからだ。また、大学院に進学した場合、就職率にどう関係するかも、曖昧であるのだという。さらにまた、新設大学では少人数で世話を篤くすることにより、単純な就職率を上げることは難しいことではない。それで高い就職率をウリにしたとしても、もちろん虚偽ではないのだが、それは企業が、なんとかの満足度95%、などと都合の好い数字だけを見せるのと似ている。著者は、このような注意をも促している。
さて、以下の章で区分されている職業を挙げてみると、「警察官・教員」「資格試験」「命を守る仕事」「銀行・商社からサービス業一般」といった具合で、配慮が行き届いている。さらに、「スポーツ」選手の多い大学もあるから、その道の人のためにも良い資料が調っている。
こうした淡々とした羅列のように見えながら、「大学教員」などとなると、さりげなくチクリと刺すものを見せてくる。あの「学術会議会員」を政府が恣意的に用いたことについて、短いが適切な批判をこぼしている。また、研究最前線への眼差しからすると、論文の引用からノーベル賞などの学術賞関係の人を生む土台というものまでをも、明らかにしてゆく。
大学には「ブランド力」もあるという。政治家・社長・小説家・俳優などにまで目を光らせ、どこの大学から多く出ているかを見せてくれる。よくぞ調べているものだ。
最後には、「ジェンダー」の視点から、女子学生や女子大の問題をも指摘する。東大で女子学生が2割を超えたのは近年ようやくだが、世界的には半々が当たり前であるからまだまだだ、と言っている。また、女子大は定員割れの問題が切迫しており、名門女子大とて例外ではないという。今後の舵取りの腕前が必要になるらしい。そして、トランスジェンダーの受け入れのある女子大や、多様性に対して適応を進める大学の一覧、そのような問題のサークルがある大学名が多く挙げられている。
データは、概ね2022年のものである。このまま5年後、10年後にこのまま用いることができるかどうか、は分からない。だが、定期的にデータが更新され、そのためのコメントも適宜書き換えられとすれば、本書はずっと続けて発刊される価値があるものと思われる。改訂はこれまた大変な作業であろうが、この先も新たに大学生となる若者がいるわけだし、その人たちが将来の社会を築いていくのだから、高校生あたりをターゲットとしているこのちくまプリマー新書が、これからも音頭取りをしてもらえたらありがたい、と思う。

た
か
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