本

『中学生時代』

ホンとの本

『中学生時代』
林友三郎
岩波ジュニア新書58
\777
1983.2

 こんなに古い本で恐縮である。これは、授業の中で出てきた文章のオリジナルということで開いてみた。四半世紀前の本であるから、内容的にずいぶん時代錯誤的なところがある。それでも、今なお販売されているというから、驚きである。
 副題に「勉強・生活・進路」とある。とにかく、これから中学生になろうかという人や、今中学生活を送っている人に、語りかけるように書いた、先生からのメッセージということで、優しく読者を包む不思議な雰囲気をもっている。教師というのは、こんなふうにも、やわらかく、しかもどこかきっぱりとした考えをもって、導いてくれるものなのかと改めて思う。
 英語の教師としての経験があり、その後、生活指導の面で多くの仕事をなしてきた方のようである。哲学科を学生時代に修めていることもあり、考えに筋が通っている。そして、やわらかな心をお持ちである。
 いかんせん、時代が古いために、細かなところはもちろんのこと、大きな筋の中でも、今の時代には使えないようなところは多々あることになるわけだが、多感な思春期に聞かせる内容としては、必ずしも古くないものがそれ以上にあるだろうかと思う。
 だから、実際に学校におけるトラブルなどのときに、ここに書いてあることが助けになるケースは、あるのではないかと感じる。何も、今風にパソコンやケータイのことが書いてあるからこそ今ためになるとは限らないのだ。
 そういうわけで、授業に関連して読んでみた本であるが、こういう、生徒たちへの呼びかけの文章は、高校入試においても定番となっており、特殊な思想や高度な社会現象の分析などを事実上高校入試では取り上げられない以上、ひとつ読み慣れておきたい種類の本ではあるだろうと思う。ひとつひとつの項目が短く、ちらりちらりと読み進めばよいわけであるから、こういう本の書きぶりや要旨の把握のために、買って読んでみるとよいかもしれない。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります