本

『大人が知らない子どもの体の不思議』

ホンとの本

『大人が知らない子どもの体の不思議』
榊原洋一
講談社ブルーバックスB1616
\861
2008.10

 サブタイトルは「子どもは大人のミニチュアではない!」とある。本書中でも、このことがまず取り上げられる。理論も述べながら、単純に縮小したのではないというところに、読者の視点をまずもっていく。
 それから、具体的に様々な子どもの機能が語られる。
 概してひとつひとつの事柄にあたる姿勢は誠実で、細やかな配慮が感じられる。読んでいて、非常に心地良い。概論から各論、そして後半はQ&Aと、読み飽きないように構成されている。
 個人的に、いろいろ格闘もあったので、子どものおねしょのメカニズムの説明には、目が開かれた思いであった。対症療法みたいなものは、民間でもずいぶん言われている。おばあちゃんの知恵めいた知識は、それなりに耳に届いていた。しかし、そのメカニズムが説明されると、目からウロコが取れた思いであった。
 組織図よりも、むしろデータのグラフが目立ち、それで、なるほど、と理解しやすくなることもあった。ひとつひとつの現象に、明確な理由や背景を添えてくるようにしてあり、本当に読みやすかった。どうしてだろう、とそこのところのほうが私は不思議であった。
 著者自身、最初に断っているように、後半のQ&Aでは、理論として確かな理由が定まっていない、あるいは著者の調べた範囲では分からない、というものがあった。そういうときにも、押しつけがましくなく、そして無責任でもなく、読者の要求に応じた形で、丁寧に解説がしてあるのだった。
 あまりにそのあたりがさりげなく徹底していて、気づこうとしなければ気づかないようなことなのかもしれないが、著者の人柄や配慮が実によく出ている本であるように思う。もちろん、索引が充実しているのは言うまでもない。こうした心づかいは、自らのことを説明できない子どもを相手にする小児科を探究する人ならば当たり前なのかもしれないが、やはりそう簡単にできることではないはずである。
 強いて言えば、最後が唐突に終了した感じがしたので、できれば「あとがき」で、読後感を安定されてほしかった、と思うが、やや贅沢な要求であるかもしれない。
 ともかく、子どもの健康や成長に関する、日頃思う疑問は、殆どすべて解決される、少なくとも説明されるのではないかと思われる。育児の中で長い間子どもを見て育てている私が、しみじみそのように感じた。
 ちょっと妬ましいほど、著者の腕が冴える一冊であった。




Takapan
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