本

『中高年のためのスポーツ医学Q&A』

ホンとの本

『中高年のためのスポーツ医学Q&A』
山崎元監修
山崎元・大谷俊郎・辻岡三南子
世界文化社
\2205
2009.6.

 中高年という部類に自分が入ってみて、ようやく自覚できるという鈍さ。そう、かつての自分ができた運動が、頭の中ではできる気持ちでいるのであるが、実際にやってみるとできない。そんなばかな、と思いつつ、やはりどうしてもできない。いや、昔できたんだから、とムキになると、突然激しい痛みが伴うということもありうる。そこで初めて、自分がとんでもない領域に足を踏み入れたということが分かる。
 このように愚かな思いをするのは、私だけではないだろうと思う。きっと、この段階の私に相応しい、運動の仕方というのがあるはずである。何もしなくなった、というのは少々心許ない。それは、体力が衰えていくということのほかに、病気を誘発するという点で、避けなければならないことなのである。
 この本は、Q&A形式で、ほぼ見開きの中で解説文と図解やデータが表示してあるということで、よくみる形にはなっているのだが、新書的なそういうタイプの本が多いのに対して、これは大判である。内容がたっぷりとある。
 何がどう必要か、どれくらいのことが期待できるのか、そういう落ち着いた話がまず始まる。説明も分かりやすいし、医学博士として威張ったようではなく、また読者に迎合するというのでもない。適切な距離をとり、姿勢をとって、スポーツの効用や危険性、常識としてよく言われることの間違いが語られる。確実なデータでそれが示されるし、運動するときにはどこをどう注意するのか、図解してくれる。親切な本だと、読んでいくとますます感じるものである。
 こうしてスポーツのことばかり、と思いきや、後半では、生活習慣病や病気について説明が続くばかりとなっていく。糖尿病や脂質の増加、尿酸値の変化や肝炎、癌、更年期障害にまで触れられ、およそ中高年が気をつけるべきことが全部網羅されていく筋書きになっているといえる。アルコール問題を含め、これは食生活次第でもあるのだということがよく分かる。スポーツにばかり気が向きがちな私たちであるが、いくら活発にスポーツのできる選手であり続けたとしても、食生活において無知なままに奔放にしていれば、取り返しのつかないことにもなるという戒めがここにある。
 こうした意味で、適度な運動の具体的な指導と、食生活の改善についての知識を具体的に与えてくれるわけであるから、これはなかなか重宝な本であると言える。
 あとは、ここに書いてあることを、私が実行するのかどうか、というところだ。最難関の障害が、実はそこのところにあることについては、多くの読者も覚知しておいでであるだろうと思う。責任は読者本人にあるとして、この本は質・量ともに十分優れた本であると言えると思った。ありがたい本である。




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