本

『猫ゴコロ』

ホンとの本

『猫ゴコロ』
淺井亮太監修・ねこまきイラスト
リベラル社
\800+
2015.1.

 2012年発行の本を文庫化したものだという。そのため文字がかなり小さく見えるところがあるが、私が見ても困難はないから、この手軽さはメリットだと感じられる。全編カラーの192頁は、価格をそう高くは思わせない。
 それはともかく、私は本書が好きだ。
 これまでも、猫についての本は、可能な限り覗くようにしている。図書館にあるものは全部開いた。自分でも買ったものがあるし、電子書籍ももっている。『はたらく細胞猫』はかなり分かりやすく知識を伝えてくれたが、如何せんそれはマンガのストーリーであり、4冊揃わなければひととおりの知識を確認することができない。
 この小さな文庫は、この1冊で、猫に関するあれやこれやのことを、事細かく教えてくれる。時折マンガ混じりで楽しませてくれるばかりでなく、知識項目も、とても見やすくまとめられ、しかも文字情報もかなり多い。そこへイラストが絡んでいるために、視覚的な印象も強く残る。
 私に言わせれば、ほぼ理想的な猫案内である。
 猫の写真は、残念ながらない。だが、しばしばある可愛い写真は、イメージに過ぎないのであって、その写真が猫の何かを明確に伝えているわけではない。猫について何かを知りたい人は、可愛い猫の写真が欲しいのではない。一読で心に入る知識が欲しいのであり、何か知りたいと思ったときに、パッと箇所が開けたらよいのである。
 帯には、「ココロを理解すればもっと仲良く。」とも書いてあり、中にあるマンガのキャラクターが鏤められている。主人公は、山田ユカ(30)と山田マユ(28)の姉妹。未婚である。姉のユカは、猫が大好きだが、どんな猫にも懐かれない。妹のマユは、猫を引き受ける係で、猫についてたくさんのことを知るようになる。その他、周辺のキャラもいるが、それなりに重要な展開があるので、楽しみにしておくとよい。  会社の先輩が野良猫を拾い、保護した猫がいたが、家で飼えないというのを聞いて、姉のユカが引き受けることになる。それで妹のマユが、買い方を指南する、という筋書きである。
 猫のこういう行動はこういう意味があるとか、こういうトラブルにはこのように対応すべきだ、などといったことも、もちろん沢山書いてある。だが私が実際的だと思うのは、しばしば費用か書かれてあるところだ。もちろん医療機関や内容の違いにより、いろいろ費用は変わるだろう。だが、猫を飼ったことがない者には、だいたいでもいいから、凡その相場を伝えておいてもらうだけで、十分参考になるものである。ありがたい情報なのだ。
 挙げていくときりがないが、ワクチン接種から多頭飼いの注意、もちろん生活のしつけから、脱走防止の策など、気づくべきところは全部押さえてある。
 猫の気持ちを知るヒントや、猫にありがちなトラブルの解決、外出や災害のときにどうするかといったケースバイケースの知識も豊富である。猫の体のケアや食事については、他の本にもいろいろあるだろうが、とにかく簡潔で分かりやすい。発情期から妊娠のときのアドバイスや子猫について、その健康診断や生活環境など、至れり尽くせりである。そして最後は、病院や診察の場合の細々とした動きへのアドバイスがあり、薬をどう飲ませるか、というのは、他の本ではなかなか見ないものがある。そして老化の問題や、葬儀のケアなどにも、ちゃんとココロが配ってある。
 病気では、外に出てしまうと病気をもらうことに、幾度か注意を促していた。だから家猫がいいのだ、というのは当然である。
 ここで、私はやはりひとつ、引っかかってしまうのだった。そう、本書は、家の中だけで猫を飼うということについては、文句の付けようのない内容である。だが、外で暮らす地域猫のためには、厳しいことばかりが書かれてあるように見えて仕方がないのである。エアコンを使うとか、室内温度はいつもこのくらいとか、そういう情報は、地域猫は死ぬしかない、というように聞こえてしまう場合があるのである。
 制作者がそんな気持ちでいるのではないことは分かっている。だが言ってしまえば、もはや外で暮らす猫のことなど、最初から眼中にないのである。家の中で猫を飼いたい、と思う人だけが、アドバイスできる対象なのである。
 この小さな本では、そこまでは要求できない。だから、希望する。本書のレベルを保ちながら、地域猫のココロをアドバイスするような本はできないだろうか。コスト的には無理かもしれないが、全国の地域猫ボランティアの人々は、皆買うことだろう。これからボランティアに加わる人には、必須の本となるだろう。ご一考願えないだろうか。




Takapan
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