本

『武将が信じた神々と仏』

ホンとの本

『武将が信じた神々と仏』
八幡和郎
青春出版社
\766
2007.5

 戦国武将に詳しい方が、それぞれの武将の、信仰という部分に的を絞ってまとめ上げた新書である。このように、関心を一つに絞って調べるというのは、楽しいことだろうと思う。人間としてのある側面をそこに見出すことができるであろうからである。
 はたして戦国武将が、どのような内面をもってその信仰をもっていたのか、それは推測するしかない。宗教的に純粋に信じたというのもあるだろうが、何かそういうのを掲げなければという程度でやっていた者もいたかもしれない。今でも、プロ野球選手が、シーズン前に一斉に神社に行ったりするが、あのような気持ちが近いのであろうか。
 一族の先祖の力を借りようとする向きもあったかもしれない。この本は、こうした疑問を解決していこうとするものではない。ただ、それぞれのヒーローがどのような信仰的態度を示していたか、その逸話から信仰に関する部分を集めて紹介した、というふうな本である。
 この本のはじめに書いてあるように、当時宗教というのは、いわば知識階級という意味をももっていた。武将自身に教養があるとは、とても思えない状況だったという。それがどの宗教をと関わるかというのは、どの知識を身につけるかということに等しい。それを俯瞰するというのも、面白い企画であると言えるだろう。
 私は個人的に、キリシタン武将をまとめて読んでみた。一部しか取り上げられていないのは、頁数からしても仕方がないものであったかもしれない。そこには、知識としての信仰というよりも、純粋な信仰の部分を示した武将もいたということが、記されている。
 深い研究所ではない。武将に関するさまざまな研究の中から、信仰について集めてみたという意味である。そういう資料と、著者の感想と、どこからどう分かれているのかは、読者には分からない。ものの本という程度で終わるのかもしれないが、結局これらの傾向をまとめる結論のようなものは出てくることがなく、日本は所詮八百万であるということで、すべては終わるしかないのだろうか。




Takapan
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