本

『文章のみがき方』

ホンとの本

『文章のみがき方』
辰濃和夫
岩波新書1095
\819
2007.10

 朝日新聞の天声人語を長きにわたって担当した著者による、文章の極意が紹介された。
 38の項目により、ポイントをひとつひとつ挙げている。そのとき、作家などの短い文を冒頭に掲げ、そこで考察する事柄について象徴的に、あるいは時にずばりと、示してから本題に入る。学んだ事柄について、それぞれの項目の最後のところに、まとめが置かれているのも親切である。
 なにより、文章が上品だ。あらゆるよい文章に触れてきた著者だけあって、ためになる資料が次々と用いられ、また筆者の品の良さが、自然とその語り口調の中に現れてきているのが分かる。
 幾多の作家その他文章の道を究めた人々が、文章について、経験を重ねた知恵を発言してきたことか。また、その意味を著者なりに紹介していくという手法が、どれほど具体的で筋の通ったものとなっているか。まことに、その光景を思い浮かべることができるような表現が、次から次へとあふれ出てくるものである。
 文章のみがき方を告げるその本そのものが、みがかれた文章であるというのは、当然と言えば当然なのだが、あらためて、その的確さに驚くばかりである。
 こうした文章についての優れた本の書評みたいなものを書くなんぞ、おこがましくてやりきれない。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります