『文房具のやすみじかん』
土橋正文・小池壮太絵
福音館書店
\1300+
2016.1.
まもるくんが、遊びに行ったあと、机の上の文房具たちが、おしゃべりを始める。
宿題をしたことでうんと働いたえんぴつが、落書きを始めた。ノートがその場所を提供する。消しゴムが、そんなことをしていいのかと心配する。だいじょうぶ、後で消しゴムさんが消してくれるから。えんぴつは楽しそうです。
絵本はこうして、ほかにもいろいろな筆記具がノートに落書きを重ねていく、それだけのストーリーなのですが、ここで驚くのは、筆記具のメカニズムをしたことで説明してくれること。
鉛筆はどのようにして筆記されているのか、だから消しゴムで消せるというのはどういうことか、それが説明される。消しゴムのメカニズムももちろん明らかになる。
それに対して、色えんぴつはどうして消しゴムでは消せないか。その違いが明確に次に示される。
ましてボールペンだったらどうなるのか。興味は尽きないが、すべて絵本の中で分かっていく。
それらは、修正液や修正テープが効果的だ。これなら大人はだいたい分かる。
ここで「消す」とはどういうことか、話が展開する。暗記シートの例で、補色のことが分かる。古来日本では「見消(みせけち)」という手法で訂正がなされていたこと、ためになる。
二重線だって立派な「消す」ことだし、デッサンのハイライトは、「消す」ことの積極的に利用法だ。そしてノートまで消せると言うが……。
まもるくんが戻ってくる。文房具たちのやすみじかんがおわった。
小学生の子どもたちにとり、不思議な「消す」ということを教えてくれる。絵本としてのロマンも感じさせつつ、知りたい気持ちをも満足させてくれる。妙にお説教臭かったり、明らかに知識をもたせようとする意図がありありであったり、そんなものも世にはあるが、ほどよいバランスで美しくまとめられている。
そして、文房具たちが起きているときだけ頁が隅までフルスクリーンで描かれ、まもるくんがいて文房具たちが本来の眠った姿でいるときだけ、白枠の中に絵があるという構成になっているところに、私は注目している。アニミズムがいいとは思わないが、人がいないところで、道具たちもおしゃべりしているのかしら、とわくわくしてくるのは確かだ